大学PCT出願は米中韓がトップ10
WIPO発表に見る世界の知財状況 その2
さる2 月 28 日に世界知的所有権機関(WIPO)が発表した2022年の特許協力条約(PCT)の大学の出願結果は、
コロナ禍を超えておおむね増加傾向にありながら、東大は大幅に減らして17位になった。
WIPO:https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2023/article_0002.html
日本トップの東大は17位に
トップ10の内訳をみると、アメリカが5,中国3,韓国2となっている。
日本でトップの東大は、前年の150件から大幅に減らして118件となった。
トップ20の大学は表の通りである。
国別の大学を見ると韓国の大学の躍進ぶりが目立っている。この勢いは今後も続くだろう。
日本の大学の停滞ぶりは東大だけではなさそうだ。上位50位までの国別大学数を調べてみると次の通りである。
トップ50の国別数
日本の大学で50位内に入ったのは東大のほか、大阪大の27位、東北大45位、京大48位だった。
この中で東北大が2021年の60件から22年に82件へ伸ばしたが、他の3大学はいずれも減少となった。
国際商標(マドリッド制度)ではアメリカトップ
2022年にマドリッド制度による出願数では、アメリカを拠点とする出願人は12,495件となりトップになった。
次にドイツ(7,695)、中国(4,991)、フランス(4,403)、イギリス(4,227)と続き、日本は3145件で7位だった。
2021年からの増減を見ると、上位15か国のうち、
オランダ(+7.4%)、韓国(+2.1%)、トルコ(+5.2%)の3か国が増加しただけで、残りの12か国はいずれも減少に転じた。
企業別に見るとフランスの大手化粧品メーカーのロレアルは、160件の出願で前年に引き続いてトップだった。
スイスのノバルティスが続き、以下、イギリスのグラクソグループ、ブルガリアのユーロゲームテクノロジー、
韓国の現代自動車、日本の資生堂が続いた。
オンライン食料品の配達と受け取りに積極的に取り組んでいるアメリカのメイプルベア社が
大幅に増やして7位になったのが目立っている。
国際商標(マドリッド制度)出願トップ20の国
国際意匠(ハーグ制度)出願は過去最高
2022年は前年比11.2%増加の2万5028件で過去最高を記録した。
トップはドイツで11.6%の増加で前年に引き続いて首位を維持した。
中国は2022年からハーグ制度に加盟したものだが、いきなり2558件を出願し2位になった。
さらにイタリアは18%増でアメリカを抜いて3位になった。アメリカは8.9%減少して5位に転落した。
スイス・ジュネーブにあるWIPO本部
知的財産権の日本停滞に歯止めを
コロナ禍で日本の産業現場が停滞したため、知的財産権を生み出す現場が必然的に停滞したのは仕方ない。
しかし、世界の状況を見るとコロナ禍を乗り越えて活動をしており、
相対的に日本の知財存在感が停滞してきたことは間違いなさそうだ。
これは製造業に偏った産業構造とも無関係ではないのではないか。
特許はアジア諸国・地域の躍進が目立っており、製造現場がアジア各地に広がってきたこととも関係がありそうだ。
IT産業革命によって、いつどこで製造しても性能はほぼ同じものになってきており、
日本人の職人気質で培ってきた製造技術の多くが追いつかれたか、品質確保としての役割が終わった感じもする。
世界はAI技術による新たな挑戦が始まっている。
チャットGPTの検索技術が実用化されると、これまでと全く違った製造現場が出てくる可能性もあるし、
人間が活動する場面が極端に変わっていく可能性もある。
この大変革に日本はどう立ち向かい乗り越えるのか。この10年が勝負の時間になるだろう。