コラム

和紙糸

石川県の輪島に旅した時に、朝市の会場で見かけた和紙を使った織物がありました。紙で作ったというタオルやスカーフが店先にありました。手に取ったところ肌触りが良くて、夏の暑い時でも吸湿性があり、首に巻いても涼しげなのです。

和紙というと楮・三俣(こうぞ・みつまた)の木の繊維が丈夫で、紙幣の材料にも使われるほど、引張りや折れにも強いモノです。昔から番傘や物入れ、障子などに使われていて大変身近なものですが、織物に使われているとは思いもよりませんでした。

和紙の糸で作られたスカーフを買い求めました。和紙は繊維が長く、繊維の隙間に水分を含むことで、保湿効果があり、湿度が高いときには吸湿し、湿度が高くなると水分を放出して、まるでエアコンのような作用があると説明書にありました。紫外線カット率が高く、抗菌性があり、おまけに脱臭効果もあり、しかも軽いのです。紙ですから、焼却しても有害なガスが出ないで、土の中では分解されるというエコな材料です。

この和紙糸の素材はマニラ麻という植物から作られているのだそうです。マニラ麻の栽培には肥料は要らず、水だけで生育するといいます。しかも成長が早く植えてから2から3年で成熟して収穫できるのだそうです。材料のコストも低くできるのです。

このマニラ麻から作られる繊維を糸にするために撚り合わせますが、この撚糸工程で、水を含ませて撚ることで強度が増すのです。
この水撚りの技術が、特許第4000140号「二重撚糸装置」として特許になっています。撚糸は和紙だけでなく異なる素材を組み合わせて撚ることで様々な風合いの糸ができるそうで、私が求めたスカーフはレーヨンとの交織でした。毛羽立ちもなく、なめらかな布織物になっていました、

このような和紙糸の用途がさらに増えています。撚糸の時にポリエチレンテレフタレートなどの補強糸と
撚り合されることで糸切れの少ない布に仕上げる技術がでてきました。
和紙を使ったランニングシューズ用の織物です。

特許第5925946号「複合和紙糸及びその製造方法、和紙糸織物、和紙糸編物」です。明細書の記載を引用すると、「長距離レースでは原始的な走りに立ち戻ってランニングシューズを裸足で直に着用して使用するケースがある。裸足の走行は人間の走りにとって最も自然で足や全身に負担がかからず疲労が少ない。裸足では豆が出来たり、その豆が破れたりすることも良くある。そのような足へのダメージが少なく、和紙からなる糸を使うことで、表面が平滑で高密度の織物ができる。この発明では目開きがほとんどなく、吸湿性に優れて、足の発汗による水分を外部に効率よく発散させ、足のムレが少ない和紙糸織物ができる」とあります。

和紙糸は吸水・吸湿に優れ、汗でもべとつかないため快適なタオルやスカーフが作れます。
さらには肌着にもよく、化学的な処理をしなくても紫外線カット効果もあり、これからも様々な用途に使われてくる可能性があります。

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