危機感
こう世の中の動きが激しくなると、なかなか先は読めません。今までのやり方で今まで通りの基準で判断するとシッペ返しを食らうことが多くなりそうです。
これからお話することは、対照的な二つの会社の商品開発の姿勢です。
一つは、ある精密機械メーカの話です。この会社は複写機を製造・販売していますが、複数の現像剤から感光体まで、すべての部品は自前で開発しているそうで す。世間の会社では現像剤を買ってくるとか、感光体は買ってくるとか、必要な部品を外部から調達してアセンブリーが主な会社もあるそうです。複写機メーカ は多くありますが、何からなにまで研究開発している所は2、3社だといいます。
この会社では、それこそ自主技術開発を徹底して行うことを目指しており、特許による製品や事業の保護、第三者が参入するのを阻止するために時間を費やして います。どうやって開発した技術を特許に結びつけるか、どうしたら特許になるかを徹底して考えて特許出願をすることが技術者のセンスとして重要視されてい ます。これは年中磨かないと、ちょっと油断すると、どんなものが特許になるかのセンスは保持されないといいます。会社のトップや本部長クラスの人が、口を 酸っぱくして特許、特許といって危機感を煽っているそうです。
あと一つの会社は自動車メーカです。ここはアセンブリーに撤しています。ちょっと大袈裟ですが・・・技術開発は多くの場合やっていない、というのです。新 車の開発には流行を感じる人が最高責任者になるといいます。この会社の例では現在ヒット中の自動車の開発、企画はエアコンの設計をしていた人だそうです。 この会社ではエンジン屋だろうと、バッテリー屋だろうと、内装屋だろうと、チャンスはあるのだそうです。
勿論、重要な部品は、自社開発をしているのでしょうが、系列を超えた部品の標準化や統一化が行われているといいますので、多分事実なのではないでしょうか。
ところで、先の自動車メーカの人によると、自動車産業はトレンディーなアパレル業界と同じだと理解するほうが良いといわれました。アセンブリーは、ある程 度の企業なら誰でもできるという危機感です。系列に技術のある部品屋さんがいて、その技術評価ができるアセンブリー屋が必要になるのです。
地上波のディジタル化を終えて、地デジ対応のテレビの値崩れが激しいのですが、標準部品はすべて複雑な回路もチップ化されて大量に生産されていますし、誰でも手に入るといっても過言でないと思います。
正に企画力が勝負になるのでしょう。自ら技術開発をしていない、部品を製造していない、さらにはアセンブルもしていない企画だけの会社は、技術評価のセン スは何で磨いたら良いのでしょうか、特許を見ることで磨いているような気がしてならないのです。企画で勝負する会社は特許の調査を重視し、特許出願も重視 するのだといいます。
最近のニュースを見ると特許出願が少ない会社は、特許をストックしている会社から特許権を入手するために、多額な費用で特許買収する企業すら現れてきています。