劣化する日本と旧統一教会問題
血塗られた歴史を忘れない
21世紀に入ってから20年余、世界はIT産業革命時代に突入し、あらゆる価値観が変わってきました。簡略に言えば技術が進化し同時に文化も異質転化へと広がったもので、同時にそれは複雑化してきたことにもなります。
日本は工業国家として明治維新後に世界の先進国に追いつくことを目標に、しゃにむに西欧文化を導入し、模倣して近代国家を築け上げ、アジアの覇者になりました。
しかしその過程で思いあがった判断に陥り、日清戦争から40年間は他国への侵略と戦争ばかりしている国家になりました。この40年間に主義信条が違うとして暗殺された総理大臣が5人、戦争の責任を取って自殺または処刑された総理大臣が3人いました。太平洋戦争の終結までの40年間、日本は血塗られた国として世界の歴史の中でも突出していました。
暗殺された総理大臣
伊藤 博文 1909（М42）年10月26日、ハルビン駅頭で暗殺
原 敬 1921（Ｔ10）年11月4日、東京駅頭で暗殺
犬養 毅 1932（Ｓ７）年5月15日、515事件で暗殺
高橋 是清 1936（Ｓ11）年2月26日、226事件で暗殺
斎藤 実 1936（Ｓ11）年2月26日、226事件で暗殺
戦争の責任を取って自殺または処刑された総理大臣
近衛 文麿 1945（S20）年12月16日、自宅で服毒自殺。
東条 英機 1948（S23）年12月23日、巣鴨拘置所で死刑
広田 弘毅 1948（S23）年12月23日、巣鴨拘置所で死刑
平和国家になった戦後日本に出てきた旧統一教会
戦前の暗い誤った国家の在り方を反省した日本は、戦後は徹底した平和主義に進みましたが、戦前からの思想を捨てきれない一部の指導者・保守層が再び日本を戦前に戻そうとするかのような活動も芽生えていました。
そのような動きに付け込んだのが旧統一教会でした。この宗教団体の創始者が掲げた教義を読むと、日本民族は朝鮮民族に隷属化しなければならず、奴隷のように支配者の言いなりになる民族であるとする位置づけでした。
筆者が旧統一教会を取材したのは1971年でした。東京の盛り場で時価100円程度のカーネーションの花を道行く人に300円で売りつける若い男女が、湧き出るように出てきたのです。300円で売ったお金は、世の不幸な人々を助ける資金になるというのですが、その拠点を聞いてみると旧統一教会でした。
警視庁はこれをいかがわしい団体と見て、道交法違反で摘発することにしましたが、読売新聞にその状況が報道されると、あっという間に売り子たちは姿を消しました。その子たちは原理運動で信者になった旧統一教会の信者であり、その後霊験商法の先兵になったと言われています。
政界に深く食い込んでいた旧統一教会
筆者はこの体験をもとに、その後旧統一教会の元信者らを取材しました。するとこの教団は宗教団体ではなく、政治団体であるとの証言が得られ、驚いたことに日本の政界に深く浸透していることを知りました。
NHKの番組で、旧統一教会信者が国会議員の秘書になったり地方議員になっている例を報道しています。
（2022年8月29日、クローズアップ現代の放映）
2000年8月30日に開催された参議院決算委員会で、社民党の福島瑞穂議員が当時の保岡興治法務大臣に対し「法務大臣の秘書官が統一協会の合同結婚式に出席していた人で、統一教会信者であるのか」とただしました。
これに対し保岡法相は、確認をしたところ「若いころにそういうこともあったかに聞きました」と答弁しました。問題視された秘書官の活動についてはネット情報で今でも流れていますが、元信者だったのか今も信者なのかは不明です。
また、旧統一教会の信者だったが脱会し、いまは被害にあっている人たちを救済する団体のスタッフになった方から詳しく取材している。また初期のころの統一教会の活動を問題視していた警視庁関係者の話では「決定的に問題なのは宗教団体と言いながら、その組織や教義を明かさないで人に近づき、いつの間にかマインドコントロールし、霊感商法で物品を高く買わせる献金手法です。これは極めて問題だ」と語っていたことです。
捜査当局から言わせると、正体を隠して人に近づき、不安感を抱かせて物を買わせ、それが「献金」であると言い含める行為は詐欺に限りなく近いという判断でした。「正体を明かさないで人に近づくのは、詐欺師とマル暴（暴力団のことを警察用語ではこう言う）の典型的な手口だ」と語っていました。
NHKが2022年8月29日夜のクローズアップ現代（クロ現）で、旧統一教会と政治の問題を追及しました。これに限らずNHKは、旧統一教会は極めて重大な問題だという視点を変えず、ニュースでもたびたび問題視する報道をしています。
UPFのイベントにビデオメッセージを出している安倍元総理
クロ現では、安倍元首相がビデオメッセージを送った天宙平和連合（UPF）は、旧統一教会から資金をもらって活動していることを幹部の証言で紹介し、反社会的活動をする宗教団体から資金が流れている団体にメッセージを送っていたことを「咎める」トーンで報道していました。
まるで銃撃した山上容疑者の銃撃目的に同情するような異例の言及でした。霊感商法でひどい被害にあっている元信者は、安倍元総理銃撃事件以来、全国で訴えるケースが急増しているということです。
この問題は、安倍氏の国葬賛否を絡めて、大きな社会問題になっています。これを総括しなければ、またうやむやの日本になるでしょう。