コラム

中小企業の知財支援を活性化させよう

中小・ベンチャー企業の知財戦略の悩み

最近、筆者のもとに中小・ベンチャー企業の経営者から知財戦略について相談に来るケースが多くなった。内容を聞いてみると、世界制覇するのではないかと思えるような魅力的な発明から、とても事業化は無理だろうという内容までそれこそピンからキリまである。

悩み事の中身を整理して集約してみると次の3点に絞られてくることが多い。

第1は、早く権利化し事業化したいという希望である。
第2は、乏しい資金の中で特許出願時の審査請求料や特許料の負担をどうするかという悩みである。
第3は、模倣品防止も視野に入れながら、中国など海外へ出願したいがその費用をどうしたらいいかという悩みである。

ベンチャー企業の創業者には、たった1件の特許で事業化が成功し、金儲けができると考える人もいるが、実際には事業を起こして製品を製造しそれを販売していくためには、ノウハウも含めて多数の知財が発生し、それを新たに権利化したり保護していく必要性が出てくる。

そのような視点を全く持たない人も多い。というよりも知財の世界がまだ理解できていない人が多い。

人材も資金力も乏しい中小・ベンチャー企業にとって知財をどのように管理しまた事業に役立てるべきか。産業現場が進化してきた現代にあって、中小・ベンチャー企業の最も重要な課題になってきた。

特許庁で推進する知財支援制度の利用

このような中小・ベンチャー企業の悩みを専門的で質の高いレベルで対応できるのは、特許庁が推進している「知財総合支援窓口」業務である。中小・ベンチャー企業の創業者らから筆者が相談を受けた場合は、まずこの支援窓口の利用を薦めている。

この窓口は平成23年度から都道府県ごとに設置されたもので「知財支援の拠点」である。むろん相談は無料だし秘密は厳守される。インターネットの特許庁トップページから特許庁行政サービス一覧をクリックし、最後に知財総合支援窓口にたどり着く。

その相談窓口一覧が別表にあると都道府県別のリストである。

窓口では、知財に関するあらゆる相談に対してワンストップで支援するという。 自治体によっては弁理士、弁護士や知財に詳しい企業人OB,OGなど プロの人材とのネットワークを作り、他の企業や研究機関との連携や特許ライセンスなどのコーディネーターから助言まで幅広い課題の対応を行っている。

最近、中国などアジア諸国・地域に進出する中小・ベンチャー企業が多くなっている。大企業は自前で知財戦略を立て権利の保護にもかなり手が回ってきているがそれでもまだ模倣品に悩まされている。

しかし中小・ベンチャー企業は、大企業が対応してきた知財戦略、知財管理をこれから確立していく段階である。

知財侵害の手口も第3世代に入ってから手が込んできたために、中小・ベンチャー企業は知財の取得から管理まで最初から取り組んでいかないとひどい目に合う。まず国際的な事業展開をするには海外での特許取得が最重要課題である。

特許庁では中小企業の外国特許出願を支援する都道府県などの中小企業支援センターに対し補助金を交付している。戦略的に外国出願を行う中小・ベンチャー企業に対し、費用の一部を助成している制度である。

この制度も最近になって一般にもよく知られるようになり、利用者が増えてきている。

中小・ベンチャー企業にとってのアキレス腱は人材不足

知財戦略と管理にはそれなりの資金が必要だが、多くの中小・ベンチャー企業にとって資金は不足しがちである。それと同じように人材も貧困な場合が多い。支援施策では、中小・ベンチャー企業の人材探しにも手を差し伸べている。

インターネットの「地域・中小企業等知財戦略支援人材データベース」には、多彩な人材検索に対応できるように対応しており、多くの中小・ベンチャー企業で役立っているようだ。

特に地方にある中小・ベンチャー企業は、弁理士、弁護士が都市部に集中してため信頼できる専門家に相談しようにも人がいない。その一方で、大企業を 退職した知財スタッフや専門的な知識を持っているOB人材が、社会貢献として中小・ベンチャー企業支援をしたいという人も増えている。

このような人材とのマッチングで役立たせようと特許庁が2008年度から人材データベースを構築して運用しているものだ。日本の経済活性化では、中 小・ベンチャー企業の活動が重要なカギを握っている。政府の制度の活用を活性化させ産業競争力が失速しないようにしなければならない。

平成24年度 知財総合支援窓口の設置場所一覧

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