コラム

中国の研究開発と知財戦略

中国特許法(専利法)の施行が2009年10月1日から始まり、中国の新たな知財時代を迎えている。21世紀になってからまだ10年しか経ていないが、この間の中国の研究開発と知財活動は急進的に発展している。

中国では、特許、実用新案、意匠をひとくくりにした専利法で規定しているが、その第3次改正が2008年暮れに成立し、昨年10月から施行された。まだ先進国の知財制度並みには追い付いておらず、たとえば意匠(中国では「外観設計」と言う)は、無審査、登録制度にとどまっており、依然として「ジャンク意匠」があとを絶たないのではないかと危惧する日本企業も多い。

知的財産と表裏一体の関係にある科学技術力だが、国家の研究投資は毎年右肩上がりで増えており、購買力平価換算ではすでに日本を追い越したとされている。研究者人口、論文数も米国と肩を並べるのは時間の問題であり、後はそうしたリソースがどのくらいのレベルに達すのかが注目点になっている。

このように急速に発展している中国の科学技術だが、本当のところどのくらいの力量にあるのだろうか。宇宙開発など国家を挙げて取り組んでいる科学技術力は、すでに日本を追い越しているように見える。産業技術の中でも材料、ナノテクなどはかなりのレベルに達している分野もある。

科学技術振興機構(JST)中国総合研究センターの特任フェローで、宇宙航空研究開発機構前副理事長をしている林幸秀氏、文部科学省科学技術政策研究所の阪彩香研究員は、3月18日、「中国の科学技術力についての分析結果」を報告した。

発表によると、中国の研究開発費、研究人口、研究論文数、特許出願数などいずれも急速に増加している。しかし、分野ごとの米国、日本、欧州、中国、韓国を比較した発表を見ると、中国の科学技術力はまだ、先進国に相当の距離がある。

たとえば、電子情報通信分野では、米国が圧倒的に強く、次いで日本と欧州が肩を並べている。韓国も相当に追いついてきたが中国はその韓国とも差がある。

中国には、華為という世界トップの通信機器メーカーがあるが、全体的なレベルではまだ相当に距離があることを示した。

ナノテク・材料分野では、日本が米国より優位に立っているがその差はほとんどない。欧州もすぐ背後にいる。韓国はまだ相当に距離があり中国もその背後にいる。先端計測技術分野では、米国の強さが際立ち次いで欧州、日本と続き韓国、中国は相当に差がある。

日本得意の環境技術分野では、日本がかろうじてトップになっているが、米国、欧州もほとんど差がなくなってきた。韓国はまだ相当の差があり、中国に至っては存在感があまりない。

ライフサイエンス、臨床医学は、米国が圧倒的に強く、次いで欧州、日本となるが、韓国、中国はかなり差がある。

このように先端技術でみると、中国の科学技術力はまだ途上にあることがうかがえるが、部分的に突出してくるテーマが出てくる気配はある。たとえば、グラフェンという層状化合物がある。グラファイトから1原子面を取り出したもので、単離されてまだ日が浅い新しい分野の研究である。

この物質を使ったデバイスは、電子の移動速度がシリコンの100倍にもなるということから近年、急速に研究人口が増えてきた。中国はこの分野では米国についで2番目に多い論文発表数であり、各国から驚きの声が上がっているようだ。2009年の発表論分数は、米国が600弱であり、中国は約320本である。ドイツ、日本が150を超えた程度であり、論文数では中国に大きく水をあけられている。

研究開発につぎ込む国の予算も、年々増加しており、海外で実績をあげた研究者の帰国も相次いでおり、中国の上昇機運はまだ当分、続くだろう。このような研究の勢いを考えると知財活動もまだまだ活性化することは間違いない。

中国の知財動向については、このコラムでも逐次報告したい。

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