コラム

中国の底力

世界知的所有権機関(WIPO)の2017年の国際出願件数のデータが発表になりました。

中国の出願は2003年からほぼ連続して毎年10%の伸びを続けているそうで、2017年は前年の12%アップの4万8882件となって、アメリカの5万6624件に続く第二位となりました。
日本は4万8208件で、僅差とはいえ2003年から保っていた二位の座を譲ってしまったのです。

諸外国での権利化のルートには各国へ直接、優先権を主張した出願もありますので、単純には比較できませんが、PCTによる国際出願は、世界に複数の国で権利化するために各企業が活用する手段ですので、特許権取得への意気込みを伝える主要な指標になります。日本の企業も前年7%増で決して劣ってはいませんが、伸び率の高さは技術開発の活発な様子を物語る一つのデータです。

かれこれ20年前になりますが、私が中国の知的財産機関との交流を図るために出張した際には中国の国家知識産権局(SIPO)や企業との交流の中で、これからは知的財産権を強化してゆく、そして国を挙げての知的財産力強化のために、工夫したり権利化を促進するために実用新案制度の活用を企業に勧めるのだと言われていたのを思い出します。その頃は、まさに黎明期で、特許レベルの創意工夫は全く及ばないので、実用新案を取得することを奨励するのだとの政策でした。

当時は我々のやってきたことに強い興味を抱き、様々な質問を浴びせられたが、そこまではできないという顔つきで話されていたのが印象に残っています。ところが、こうした知的財産強化の政策は着実に功を奏し、今回の躍進につながったことは間違いありません。数年前にハルピンの駐車場で見かけたパトカーに「専利産品 ?造必究」と書かれていました。知的財産権を侵害しているものは必ず捕まえる」との意味で、単なる姿勢を示すのではなく、総合的に自主技術を開発し物まねをするな、との意気込みであったことが、今になって明らかになりました。中国の底力と国を挙げての長期政策が着実に形になって表れているのではないでしょうか。

最近話題になっているIoT(Internet of Things)、全てのモノがインターネットに繋がる時代を先取りする技術の分野でも、中国の企業の底力を見て取れるケースが表れています。

インターネットサービスで著名なアメリカのグーグルが、中国のインターネットサービス大手のテンセントと
長期にわたる特許の共有で合意したとのニュースです。

報道では、グーグルが中国でのサービスから2010年に撤退したのですが、再度参入するために中国の有力企業と連携したとの論調でした。私は中国の企業の技術力と特許権の強力な力が無視できないとの判断であったと思っています。

テンセントのインターネット広告サービスや、情報・通信関係の技術での国際的な特許網は相当なもので、
グーグルは早めに手を組んだと思わざるを得ないのです。

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