コラム

パルスオキシメータ

人の身体には酸素が欠かせませんが、血液中に含まれる酸素の濃度を測ることで正常に心臓が機能しているかどうかを計測することができます。採血して血中の酸素濃度を測ることになります。手術中などで麻酔の影響で呼吸が停止してしまう危険性がある場合などは、患者の低酸素状態をチェックするのは大変でした。

そこで登場したのが、耳たぶや指先に挟むだけで動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を採血することなく、指先などに光をあてることによって測定するパルスオキシメータ(pulse oximeter)です。

私が初めてお目にかかったのは、数年前に免疫不全になるギランバレー症候群で入院した時でした。ウイルスへの過剰反応で全身の神経伝達系がダメージを受け、握力はゼロになってしまったのです。重症化すると心臓を動かす神経系統にまで及び死に至る例もある難病でした。

一日中心電計をつけて看護師さんがモニターで監視して、変化があると駆け付けてくれたのです。後でわかったのですが、不整脈も発生していて、病院側では相当気を付けていたようでした。その時心電計と同時に装着していたのが、パルスオキシメータでした。洗濯挟みのような形で耳たぶや指先に挟み血中の酸素濃度を測るのです。

心臓の機能が低下して低酸素状態になり、命の危険を伴う重症化をいち早く見つけることができるのです。酸素は脳細胞で約25%を消費するそうで、脳に送られる酸素が途切れると2分後には脳細胞の破壊が始まり臓器不全を起こし、生命を保つことができなくなるのです。手の指先に挟むタイプのパルスオキシメータは、新型コロナウイルスの治療でも重症化の前兆を事前に把握するために世界中の病院で使われています。

最近歯医者に行ったのですが、コロナ対応のために治療前に手の消毒やうがいをして、その後にパルスオキシメータで、血中酸素濃度を測られました。酸素濃度が90%以下だと対応が必要になるようです。

パルスオキシメータは病院の手術室や集中治療室、内科、呼吸器科、循環器科の外来・病棟などで、幅広く使用されていますが、急性呼吸不全などの症状を判断する際にも使うそうで、家庭や介護施設で装備しているところもあるのです。新型コロナウイルスの感染予防になると思い、家庭で求める人が現れて、必要な病院や施設で入手できなくなるというマスクよりも重大な品薄状態を招いているようです。

酸素は血液中の赤血球の中にあるヘモグロビンによって運ばれますが、どの程度まで酸素を運べているかを、このパルスオキシメータでは血液に透過した光線を当てて検出して脈動との関係を測るのです。波長の異なる複数の光を与えて光の吸収の違いを計算することで、酸素飽和度を測定します。

1979年に成立した特許第947714号(特公昭53-26437号)「光学式血液測定装置」。発明者である日本光電工業の青柳卓雄さんはコロナ騒ぎの2020年の4月18日にお亡くなりになりました。測定精度の向上を図り、最近は5波長以上の光を照射する発明も出ています。

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