コラム

ハングリー (最終回)

過日ある会社の会長さんとお話しをしていました。

近頃の日本ではどうして、最近の中国のような技術開発が行われないのだろうかという疑問です。顔認証技術や携帯電話の5Gといわれるサービスでは、どうも米国をも凌駕する基本的な避けて通れない技術が中国勢に抑えられているという話題です。

私も見聞きしましたが、中国からの留学生は大変優秀で、大学卒業後日本のメーカーに就職して良い仕事をすると企業経験を生かして国に帰り、相当中枢の研究に携わるか、ベンチャーを起業してユニークな商品を出してくるケースが少なくないのです。

米国への留学経験がある人が中国企業を起業化して、活躍していることも周知のことです。この背景には何があるのだろうかという話が当初の話題でした。

何しろ最近の特に若い世代は、色々と恵まれていて、それなりの職場でそれなりにやっていれば、生活に苦労することもなく暮らせることも一因ではないかという話で、我々年寄りから見るとハングリーではないのではないかと妙に話が合ったのです。

こうした話は、昔はこうだったという高齢者特有の話題で、若い人から見れば時代が違うという一言で片づけられてしまうことが少なくありません。

そしてフト、最近行われた次期米国大統領候補2名の討論会のやり取りを見ていたら、何か心配になってしまいました。どことなく恵まれた社会の言い争いで、どのような危機意識を持って世の中を動かそうとしているのかが感じられなかったのです。

こうなると先の中国がスキをついて、色々なところで世界を覇権してしまう余地を残すことにならないのかと感じました。

虎視眈々という言葉がありますが、それなりの目的をもって、それなりに世の中を見ていると、進むべき道が描かれてくるのではないかという気がします。

実は、だいぶ前ですが、有効特許はどんなものなのかというアンケートを取ったことがあります。基本的な概念で、どうしても避けて通れない特許や多額の実施料を稼ぎ出した特許を分析したのです。その結果出てきたのが、世の中で一番最初にその技術分野での課題を見つけて、解決するための手段である発明を考え出したモノが大半でした。

これって、世の中の生活に満足していて、あまり困ることがないところには生まれてきません。課題の先取りや世の中の先を行く技術の開発には、困ったことを見つけるハングリーな環境も大切ではないかと思えてきたのです。

私は長い間知的財産の世界で生活してきました。今までの経験を元に、皆様に気づいてほしいという気持ちでこのコラム「そよ風」を執筆してきました。様々な特許達が何かを訴えているような気がして、色々な話題を取り上げてきました。

最近は、体力気力的な衰えを自ら感じております。年寄りの戯言にならない内にコラムを収束すべきだと思えてきました。長い間読んで頂いた皆様には感謝申し上げます。

これからもハングリーに「なぜ」「何のため」と見ていくと新たな課題に気づくことは間違いないと思います。皆様のご活躍をお祈りして筆をおきます。

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