コラム

ノーベル物理学賞と特許ロイヤリティについて(上)

自然科学19人の受賞者の業績はどこであげたものか

今年のノーベル賞発表は、青色発光ダイオードの製造技術を開発した赤﨑 勇、天野浩、中村修二博士の3人が受賞して日本中が沸き返った。やはりノーベル賞は別物である。これは日本だけでなく欧米の先進国でも同じであり別格 の顕彰なのである。

自然科学の3分野の日本人のノーベル賞受賞者は表のように19人となった。このうち2008年に物理学賞を受賞した南部 陽一郎博士と今回受賞した中村修二博士は、いずれもアメリカ国籍であるが日本人としてカウントした。

というのは、2人とも日本で生まれ、教育を受 け、受賞対象となった業績はいずれも日本国内であげたものだ。後年、アメリカ国籍を取得したのが、中村博士はアメリカの研究助成金をもらうためにアメリカ 国籍を取得したとしている。

ノーベル賞受賞業績をあげた主たる地域を調べてみると表のように圧倒的に国内であげた業績が多い。外国で あげた業績は、いずれも外国の研究者の指導によって示唆を受け開花したものである。

このようにして見ると、日本の研究基盤も決して外国に劣っている訳ではないことが分かる。これからも日本からノーベル賞受賞者が次々と出てくる可能 性が高い。

ノーベル賞と特許

世界中で誰も気が付かなかった発見、発明をしなければ取得できないのが特許で ある。ノーベル賞もまったく同じである。誰も成し遂げることができなかった業績を上げ、人類に貢献した人だけに授与される。

ノーベル生理 学・医学賞の審査機関の事務局長が来日して講演したとき、ノーベル賞受賞候補者のスクリーニングに特許の出願実績を見ていると語っている。世界で最初 に発明した人だけに付与される特許権は、ノーベル賞授与の条件に合致していることになるから当然である。

受賞者した3人(NHKの報道から)

赤﨑勇博士が開発した青色LEDは、名古屋大学に14億円を超える特許収入をもたらしている。赤﨑博士は、名古屋大学の助手などをへて、昭和56年か ら平成4年まで名古屋大学工学部の教授を務めた。

赤﨑博士の最初の特許は1985年だった。それからこれまでに青色LEDの基盤となる特 許6件を取得しているという。主な特許は2007年までに切れたてしまったが、こうした特許は、いずれも赤﨑博士と豊田合成の共同研究で生み出されたもの だった。

経過をたどってみると次のようになる。

1986年、JSTが名古屋大学の赤﨑教授の研究開発成果を豊田合成で実用化するた めに研究開発費の提供を申し出た。赤﨑博士は最初、時期尚早として渋ったが後で同意することになる。

JSTから豊田合成には、3.5年間で 5億5000万円の融資型助成金を提供した。そのときの条件は、研究開発期間の3.5年間はJSTより研究開発資金を提供し、研究開発が終了してJSTより開発 が成功と認定された後の5年間で、JST提供資金を無利子で返済することだった。

ただし、助成金による研究開発成果が売上高に貢献した場合は、売 上に応じてJSTにロイヤリティを支払う条件になっていた。

結果的に豊田合成は、この助成金で青色LEDを開発して売り出し、売上高を延ば していく。この売上高に応じて豊田合成は、1997年から2005年まで総額46億円(2013年までは総額56億円)のロイヤリティをJSTに支払った。

同社の LED売り上げは、2005年までに1480億円と推定されている。

JSTに支払われた56億円の行方

JSTに支払われた 特許ロイヤリティの56億円のうち、14億3000万円を当時の契約によって名古屋大学(当時、国立大学)へ還元した。その残りは国庫へと還元された。名古屋大 学は、入金されたロイヤリティの一部を当時の国立大学の規定に従って、発明補償金として赤﨑教授に還元した。

ただし 上限は、当時年間600万円だった。これは当時の国家公務員の制度がそうなっていたからだ。特許庁では上限600万円は少なすぎるとして、後に上限なしに 制度に改正している。(http://www.jpo.go.jp/torikumi/hiroba/1402-003.htm

赤﨑教授は、この制度改正によって、当初は年間600万円以上の報酬を得た。その後はこれをはるかに超えるロイヤリティを受けていたと思 われるが、その総額がどのくらいかは公表されていないので推測でしかない。多分、少なくとも1億円を越えるのではないかという。赤﨑博士の貢献から見ると 少なすぎる気もする。

一方、名古屋大学は赤﨑博士の業績を称えて、特許収入を基金にして平成18年に「赤﨑記念研究館」を建設し、青色 発光ダイオードなどの研究者の拠点となっている。

受賞の喜びを語る赤﨑博士(NHKテレビより)

国内の産学連携活動で、特許ロイヤリティとしてこれだけの額が支払われたことは例がない。ただし、外国との産学連携では、北里研究所名誉理 事長である大村智博士が、アメリカのメルク社から総額250億円のロイヤリティを取得している。

産学連携の特許ロイヤリティとしては、世界的に見て も破格の還元である。

次回は、中村修二博士の特許係争とロイヤリティについて検証してみる。

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