ネギ
日本人の主食は、お米ですが最近は食の多様化、特に若い人は何が主食なのか分らないようになっています。私は三食ご飯でも構いませんが、一日に一度はパンやうどんか、そばだという人は少なくありません。
ところで、そばはなんで、あんなに店によって味に差があるのでしょうか、まずいそば屋に出っくわすと最悪です。
多少美味しくないそばでも、きざみネギ(葱)をふりかけるとひと味違うような気がします。家でも、まずいそばに出会うことがありますが、思い切ってネギをはずんで食べてしまうことにしています。
こうした薬味のネギを、家で作らない家庭もあるといいます。あれだけ細かく切り刻むのが不得手な人が増えたのか知りませんが、スーパーなどではきざんだネ ギが売られているそうです。まな板さえ持っていない家庭もあるようで、青いネギをきざんで薬味を作るなどということも行われなくなるのでしょうか。もっと もきざみネギにするような細い青ネギを一束買っても、一度に消費する量は薬味としては僅かなものでしょう。
余ったものを冷蔵庫に入れておいても、数日で新鮮さが失われてしまい、薬味としての用をなさなくなってしまうそうです。こうしたことに着目して、そばやうどん、さしみなどの薬味にするきざみネギをパックにして商売する人が出てきたのです。
京都に住む矢島さんは、こうしたきざみネギをなんとか長持ちさせて、流通ルートにのせようと考えました。きざみネギは傷みが激しく、1~2日で用をなさな くなってしまうそうです。もちろん薬味としての味や香りを考慮してのことですが、束になったネギよりも傷みが早いことは理解できます。
そこで考えだした考案が、実公平1-9427号(実用新案登録第1794977号)です。きざんだネギを水洗いしてヌメリを除きます。こうして水洗いした後に、付着した水分を除き、そのネギを市販のポリエチレン製の包装用のパックに詰めて売るというアイデアです。2週間近く風味が保てるといいます。
実用新案の請求範囲は短いものなので以下に書いておきます。「水洗いによりぬめりが除去され、付着水分が実質的に除去されているきざみ葱が内蔵されている ことを特徴とする葱包装体」というものです。実用新案は物でなくてはなりません。私がびっくりしたのは権利の取り方です。普通に考えれば、基本的なアイデ アは、正にきざみネギの製造方法です。これを「きざみネギ包装体」として権利を取得したことです。包装されている中身の加工方法を含めた考案なんて今まで 見たこともありません。
きざみネギのビジネスを考えたこともさることながら、流通ルートにのる形でアイデアを表現して実用新案にしたことは大変に非凡なことです。権利行使を意識 した権利の取得は、我々も見習うことが必要ではないでしょうか。この考案は昭和59年の出願で平成元年に登録になりました。ネギ嫌いな人にも、ぬめりがな ければ喜ばれますかね。