テレホンカード
最近は携帯型の電話機やスマートフォンが普及して、街角から公衆電話機や電話ボックスが極端に少なくなっています。
孫が中学最終学年の時に、社会学習という職業体験をする機会がありました。孫は高齢者養護施設を希望したのです。私が土地勘のあるところだったもので、事前にどのようなルートで行くべきかを検証するために同行したのです。帰りの道すがら何か事故や事件にでも遭遇した時のことを考えて、携帯電話機を持ってゆかなければならないねと話していたら、中学校では携帯電話機は禁止だとのこと。それならと帰りに公衆電話機を探しながら歩いたのです。やっと見つけて電話ボックスに入りました。
公衆電話機は初めて使うとのことで、ハンドセットを外し、テレホンカードを入れる口に挿し込むんだと説明し、どのようにカードを挿すのかも知りません。カードの切り欠き部を手前にしてなどと説明し、何とか緊急連絡方法のめどを立てたのです。
そこで思い出したのがこの話。テレホンカードの前後が,分かるように矢印がありますが、目の不自由な方にも区別できる機能を持ったカードです。
昭和59年(1984年)の出願で、出願当初の明細書にはカードの表裏の確認および電話機に挿しこむ方向を指示するための切欠部、穴部あるいは押形部を設けるというアイデアでした。この出願は押形部を設ける実用新案登録第2058104号(実公平5-25007号)として権利化されました。
また、出願分割を行い、切欠部の一つの形態としてカード本体の外周縁から本体内に向けたくぼみを、カードの中心線からずれて配置する実用新案登録第2607899号「テレホンカード」が権利化されました。この権利は、1984年9月5日に出願をした元の出願(親)を分割した出願(実願平6-5675)(子供出願)を、さらに分割した孫出願でした。
出願の分割は、出願が審査継続中はいつでもできます。つまり法律的には有効な手続なのです。ところが、親出願の当時は実用新案の権利期間が公告から10年または出願から15年の短い方と定められていました。親の出願から15年以上も経過した孫出願が1999年12月20日になされ、2010年6月10日に登録されました。
権利をめぐり、複数の裁判が提訴されました。設定登録の時点で、実用新案権の存続期間が満了しており、権利満了後の損害賠償はないとされました。
また、不当利得返還請求の提訴もあったが、権利満了後の損失は存在しないと請求は棄却されました。
何れも妥当な判決だと思います。何で初めの出願の権利満了後、つまり出願から15年も経過している時点での、出願の分割がなされたり、審査が行われて権利が付与されたのかと疑問に思います。審査も、権利維持も、裁判も相当な人手やお金を掛けていて、手続き上は可能とは言え、何か釈然としません。