コラム

セブンスターローズ

今年の春から初夏にかけての陽気の良くなった時期に、横浜で全国都市緑化よこはまフェア(Garden Necklace YOKOHAMA 2017)が開催されています。

「横浜を彩る100万本の花々と美しい街並みがお出迎え」とのキャッチフレーズでみなとがガーデンと里山ガーデンとエリアを分けて季節の花を植えたガーデンのネックレスで街を彩ります。

この催しの一環として行われた日本フラワー&ガーデンショウで行われていたトークショウで、感銘を受けた話があります。

九州の福岡でバラの園芸場を営んでいる棚町満さんのバラの育成物語です。

棚町さんは実家の農家を継いでのち、ヨーロッパの庭にあるようなクラシカルな形のバラを作りたいと、長野県や千葉県まで行き、ガーデンローズの苗を入手して試作を繰り返したといいます。しかし、半分以上は花がつかなかったり、トゲばかりだったり、花が重かったり、シミが出やすいなど欠点の多いモノだったと振り返っています。そして、そうした中から有望な品種を選んでは市場に出荷していたのです。

ヨーロッパの庭園にあるようなクラシカルなバラは、ブーケなどに人気が出たが、花が咲いたのちに、見ごろになっても、散るときはバッサリと散ってしまう。花嫁がブーケとして生花を持っているときに、ぱらぱらと花びらになって散ってしまっては、さまにならないどころか、縁起が悪いということで、お花屋さんではブーケを作るときには接着剤で花弁をつけることがあるとのことでした。

棚町さんは、この話を聞いて「散らないクラシックローズを作る」という目標を掲げ、育種を開始したのです。最近のブーケはオアシスに挿すことが多いので、花と茎の枝分かれの長さを長くして、ふわふわと揺れて花嫁のウキウキ感を動きで表現できるバラを作りたいと思ったのです。

私のような素人がいうのもなんですが、植物をそこまでイメージ化して育成をしていることに感動を超えた驚きを覚えました。私の経験した工業的な製造業でそこまでエンドユーザーの意識を考慮したコンセプトを作れるのか。またどうやって実現したのか興味津々でお話を伺いました。

棚町さんは、「花弁が散らない、まるく咲く、良く伸びる、少し香る」という植物の感じを思い浮かべながら交配し、大事だと思うバラを選び出してゆくと表現されてます。

例えばソメイヨシノのような淡いピンクのバラを作りたいとしても、交配ではマットなピンクが出やすいことが経験上分かっていたので、「枝替わり」という、同じ交配してできたバラの中で、望む形質の枝を保管して何らかの拍子に出てくる枝を大切にして固定化するのだそうです。選抜育種と交雑育種の2種類を組わせて実現したのが、セブンスターローズです。品種登録番号25029(2016年3月23日登録)で花き連ブルーリボン賞受賞、2016年ジャパンフラワーセレクション受賞のバラです。

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