コロナ禍でも活性化していた中国の知財活動
コロナ禍期間でも増加する特許出願
コロナ禍の発信地となった中国の2020年1月から6月までの上半期の知財活動がこのほど中国知識産権局から発表された。世界経済活動が全般的に停滞化している時期だけに中国も同じだろうか。そう思っていたが、コロナ禍をくぐりぬけて中国の知財活動は活性化していたことを知り、少々驚いた。
特許の出願件数を見てみよう。2020年1月から6月末までの件数は、68万3千件で昨年同期比で5%増加だった。特許権付与件数を見ると21万7千件でことらは1%減少だった。権利付与した特許権の96%は職務発明によるものとしている。
この種の発表で中国の特長は、職務発明の割合を必ず発表することである。特許案件の出願から審査を経た権利付与までは、それなりの時間が必要だが、そうしたタイムラグは別として前年同期の数字と比較することに意味を見ているようだ。
職務発明は毎年、90%代の後半になっており、大多数が企業からの出願と推測できる。
この時期の日本の特許出願件数は、特許庁の発表によると5月末までの数字は出ている。1-5月までの累計出願数は12万2315件である。昨年同期比では6.4%減となっている。中国がコロナ禍の期間でも増加しているのに、日本は予想通り減少になっている。
またこの種の統計発表も中国は早い。行政の取り組みと組織が先進国方であり、日本はこの面でも後発国に後退してきた。
次に商標の出願件数を見ると、428万4千件だった。日本の1-5月末までの出願件数は7万5906件で昨年5月末までの出願件数の12.1%減少となあっている。日本の減少は予想通りである。
順調に伸びる国際知財活動
PCT出願は、件数の発表はなかったが、昨年同期比で20.7%と大幅に伸びた。これも驚くべき伸び率である。中国はもちろんだが、欧米でもコロナ禍であれだけ社会が混乱している時期に20%以上の増加率はすごい数字である。
もっともこの時期にアメリカの株式市場は、順調に上昇しておりIT関連などハイテ企業が集まっているナスダックは市場最高値を更新中である。これはコロナ禍で社会構造が変革し、企業活動も変革しているからである。
マドリット商標出願は、3875件で昨年同期比36%の増加だった。また6月末までの中国の有効マドリット登録商標は4万1千件となった。
PCT出願受理した件数は、2億9500万件と言う。昨年同期比で22.6%増加となっている。世界の工場から世界の研究拠点へと衣替えしてきている中国の一断面を見せているようだ。
集積回路登録件数は5176件であり、昨年同期比は78.2%の大幅なの増加になっている。コロナ禍で製造業の停滞が言われてきたが、中国はこの機会に半導体設計に力を入れてきたようだ。
米中知財戦争とかファーウイエの米国排除などの問題もあり、かえって中国の技術革新の勢いに拍車をかけることになっているように見える。
上半期の中国での特許・実用新案・意匠の出願件数は219万5千件と発表している。知識産権局の記者会見で政府は「コロナウイルス感染症の発生以来、国家知識産権局と国務院は、知財に関する主要な政策決定と展開を忠実に実施た結果」とコメントしている。
知財ファイナンスに力を入れる
政策実施の中でも今年の特長は、特許・商標の質権の設定とそれを抵当権にしたファイナンスの実施案が拡大したことだ。これはコロナ禍になって中小企業やベンチャー企業が資金調達に行き詰まることに対応した施策の結果である。
この時期のファイナス額は853億元(日本円で約1兆5千億円)になる。なぜこのような数字に伸びたのか。記者会見でも質問が出た。
これに対し知識産権局の知財利用推進局のレイ・ビンユン局長は「コロナ禍の影響が出てきた時期に政策文書を策定し、緊急にターゲットを絞った政策を決めて早急に進めた。その中で資金調達のニーズに対する包括的なマッピングを策定し、銀行と企業間のドッキングサービスを積極的に推進sる指導を行った」としている。
中国の知財関係者に聞いてみると、「金融機関もこの時期、経済活動停滞になると収益が上がらなくなるので、知財政策にうまくのっていわば収益増加に結び付けるファイナンスをしたのではないか」と語っている。
この政策と平行して金融機関は知財をコア指標とした企業のイノベーション能力を評価する仕組みを構築するように支援したとも語っている。いずれにしても中小企業、ベンチャー企業の資金枯渇の歯止めを狙った積極政策支援活動である。これが新たな知財ファイナンスの定着につながるかも知れない。
オンライン裁判が全体の半数を超える
一方、2020年上半期の中国での知財訴訟の裁判のオンライン件数は6281件にのぼったと発表した。これは知財訴訟の54.2%となり半数を超えた。いよいよオンライン裁判が主流の時代になってきた。日本の後進性は眼を覆うばかりだ。
オンライン裁判の様子を報告
https://mp.weixin.qq.com/s/63Z3wJVYgjrPobJqhX5gmA
特に行政裁判のオンライン裁判に重点を置いており、紛争内容を案件内容別に整理して標準化しているようだ。このシステム開発で時間的な節約とコスト節減を狙っていると発表している。
オンラインとオフラインを組み合わせた裁判も活発に行っており、効率化に取り組んでいることを強調している。