ものの基本
我々の知的財産を長年やってきた仲間と、暮れになると会う機会が増えるのは道理ですが、話題は病気とか薬の話で盛り上がることが少なくないのです。しかし、昔からやってきた仕事や、世の中の動きを俯瞰的にみる話になることも少なくありません。
そうした機会と、最近の企業での知的財産部門がコストセンターとして見られ、どんどん人員の削減、もしくは退職などでの自然減の補完がなされないという相談とも愚痴ともいえる話もいくつか耳にします。
啓蒙や啓発で知財の重要性をいくら唱えても、それは知的財産部門が考えれば良いことなのでしょうと言われ、ほとんど相手にされなくなっているという話もあります。
企業の危機管理も同じですが、コスト意識、利益獲得の行きつく先が、談合などといういつかは分かってしまう反社会的な動きも後を絶ちません。経団連でも、1991年に「企業行動憲章」― 社会の信頼と共感を得るために ―を定め、企業毎に行動規範を作るように働きかけています。何回か改定も行われています。内容はすべて当然やらねばならないことばかりで、今さら経団連が制定すべきなのかと少なからず思えるものなのです。不正が後を絶たないことが背景にあり、いくら規範を定めても、教育啓蒙を続けないと、川の土手と同様に、どこかに水が漏れる小さな穴が開き、いずれは土手の崩壊や、川の決壊を招き水害を発生させることになってしまうのです。
経団連の企業行動憲章の一部を見てみましょう。
社会的に有用で安全な商品・サービスを開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得。公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行う。政治、行政との健全かつ正常な関係を保つ。広く社会とのコミュニケーションを行い、企業情報を積極的かつ公正に開示する。個人情報・顧客情報をはじめとする各種情報の保護・管理を徹底する。従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現。環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の存在と活動に必須の要件として、主体的に行動する。「良き企業市民」として、積極的に社会貢献活動を行う。市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決し、関係遮断を徹底する。ほかにグローバル化に対応。経営トップの率先垂範。社内外の声を常時把握し、実効ある社内体制を確立。経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。
などと結構具体的に定められています。
知的財産の分野でも、研究開発前にはよく調査しよう。開発の成果はもれなく権利化しよう。他社の権利を尊重して侵害を起こさないようにしよう。などと方針や規範を定めている企業も少なくありません。
行動規範はあっても、実行が伴わないのは、世の常。しつこく誰かが基本に戻り唱え続けなければならないのでしょう。テレビコマーシャルのように・・・繰り返し。
物事の基本は分かっていても、行動に結び付くまでには高いハードルがあるのです。