コラム

ますます元気な中国の知財活動

2008年9月に発生したリーマンショック以来、先進国は産業活動の停滞が続き研究開発でも元気がなかった。最近になって回復基調になってきたが、知的財産活動はまだ軌道に乗るまでに至っていない。

その中で知財活動が元気なのは中国である。前回に引き続き中国の話題をお届けしたい。

中国は特許、実用新案、意匠をひとまとめにした専利法(日本の特許、実用新案、意匠の各法を1本にまとめたもの)による統計を取っている。

2009年にこの3つの知財の出願数は前年比18%増の約97万7000件だった。この中で特許出願は、約31万5000件で、前年比9%増で過去最高となった。

さらに3つの知財取得数を見ると、前年比41.2%増の約58万2000件で、特許取得数は同37%増の12万8000件だった。

中国は世界の工場と言われるように、先進国から進出した企業からの特許出願が多かったが、この年初めて国内企業(人)が国外企業(人)の取得数を上回った。

中国の企業も知財に目覚め始めており、世界的企業に成長した通信機器の華為技術、中国電通、総合家電メーカーのハイアールなど国際的な知財活動を展開するようになってきた。

World Intellectual Property Organization(WIPO:世界知的所有権機関)が毎年発表しているPatent Cooperation Treaty(PCT:特許協力条約)に基づく国際特許の出願数でも中国企業が勢いを増してきた。

2009年度の国別PCT出願数は、2008年の16.4万件から▲4.5%の減少となった。欧米主要国が軒並み減少し、日本、韓国はほぼ横ばいの微増だったが、ひとり中国だけが約30%増加した。

順位 国名 2007年 2008年 2009年* 占有率
1 アメリカ 54,037 51,653 45,790 29.40%
2 日 本 27,748 28,785 29,827 19.10%
3 ド イ ツ 17,824 18,853 16,736 10.70%
4 韓 国 7,065 7,901 8,066 5.20%
5 中 国 5,465 6,128 7,946 5.10%
6 フランス 6,570 7,074 7,166 4.60%
7 イギリス 5,539 5,514 5,320 3.40%
8 オランダ 4,422 4,339 4,471 2.90%
9 ス イ ス 3,814 3,749 3,688 2.40%
10 スウェーデン 3,658 4,136 3,667 2.40%

「人民網日本語版」2010年4月30日付けの報道によると、国家知的財産権局の甘紹寧副局長は、4月29日、2009年の中国の特許出願状況を5つの特徴として発表した。

第1の特徴は、国内の発明特許出願件数が引き続き増加を続けており、09年の特許出願件数は前年比17.9%増の97万件に達し、うち国内の特許出願件数は22.4%の増加となった。

第2の特徴は、国内の特許の比率が上昇したことだ。国内の3つの知財(特許、実用新案、意匠)出願のうち、特許の比率が26.1%増と5年前から2.5ポイント伸びた。国内の特許出願件数は3つの知財出願件数全体の73%に達し、前年比18%増となった。

第3の特徴は、企業の技術革新がさらに進展して主体的に研究開発に取り組むようになったことだ。2009年は企業の出願件数が国内の職務発明全体の8割前後を占め、特許を取得した内訳を見ると、国内の特許が初めて国外を抜いて全体の50.9%に達した。

第4の特徴は、国際特許出願件数で世界5位になったことだ。中国がPCTの加盟国となった1994年当時の国際出願件数は103件に過ぎなかったが、2009年には8000件近くに達した。

これも2009年には韓国を抜いて4位になることは、ほぼ確実と見られる。

第5の特徴は、特許審査がレベルアップしたことだ。中国では現在、特許の審査は25.8カ月、実用新案の審査は5.8カ月、意匠の審査は5.5カ月である。世界的にも審査期間が比較的短いとしている。

このように中国の知財活動が活発化している背景には、中国政府が中小企業の国際特許出願に資金援助していることも追い風になっている。

中国財政部は2009年10月から、「国際特許出願に向けた特別援助資金管理暫定弁法(以下「弁法」)」に基づいた国際特許出願特別資金を設立し、国内企 業の積極的な国際特許出願に資金援助を始めた。2009年の資金額は5000万元(約7億円)が中小・ベンチャー企業に提供された。

中国の知財活動でもうひとつ特徴的なのは、特許の存続期間が比較的短い点だ。「2008年中国有効特許年次報告」によると、中国では有効な特許の保有件数が急速に増加しているが、権利を維持する期間が短いという。

維持期間が10年を超える特許は全体の約44%、20年を超えたものはわずか3.2%であり、国際平均を下回るとしている。

先進国の平均では10年を超えるものは約80%、20年を超えるものは約23%という。この状況は、中国の特許は技術レベルが低く、重要でない特許が多いからと言われている。

しかし個別の企業を見ると、すでに世界トップクラスになってきた中国企業も出てきている。

PCTの2008年の企業別出願数では、史上初めて華為技術がトップとなり、世界を驚かせた。2009年にはパナソニックが首位を奪い返し2位に後退したが、華為技術の知財活動は世界のトップ企業の仲間に入ったことは間違いない。

華為技術は1988年に設立された通信機器メーカーであり、通信事業者にカスタマイズされたソリューションを提供している。迅速で高品質な製品開発と世界的な販売網で知られている。

2008年の売上高は233億ドル(約2兆1436億円)で前年比46%増。売上高の75%は海外からだ。シスコシステムズ、エリクソン、アルカテル・ルーセントとノキアシーメンスネットワークスなどと並ぶ企業に成長した。

また、23位にランクされた中国の中興電通(ZTE CORPORATION )は、1985年に設立された携帯電話網設備(基地局等)、携帯電話端末、無線製品、ネットワークプロダクト(GSM、PHS、3G、W-CDMA、 CDMA2000、ADSL)などの開発・製造メーカーである。

今後も中国の知財活動はますます活発化してくるだろう。

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