コラム

この10年間で見る世界企業の研究開発の動向

アメリカ特許商標庁(USPTO)で特許登録するアメリカ以外の企業は、世界的な活動を展開している企業である。USPTOでの特許取得件数のラン キングは、そのまま企業の研究開発力の指標にも結び付くものであり、産業分野の消長や産業構造の変革の動向をうかがい知るヒントにもなる。

表1 2001年および2010年にUSPTOで取得された
特許の上位企業のランキング

 

企業 2001年 順位 2010年 企業
IBM 3411 1 5896 IBM
NEC 1953 2 4551 サムスン電子(韓国)
キヤノン(日本) 1877 3 3094 マイクロソフト
マイクロンテクノロジー 1643 4 2552 キヤノン(日本)
サムスン電子(韓国) 1450 5 2482 パナソニック(日本)
パナソニック(日本) 1440 6 2246 東芝(日本)
ソニー(日本) 1363 7 2150 ソニー(日本)
日立(日本) 1271 8 1653 インテル
三菱電機(日本) 1184 9 1490 LG電子(韓国)
富士通(日本) 1166 10 1480 ヒューレットパッカード
東芝(日本) 1149 11 1460 日立(日本)
ルーセントテクノロジー 1109 12 1443 セイコーエプソン(日本)
GE 1107 13 1438 ホンハイ精密工業(台湾)
アドヴァンスト・マイクロ・デバイス 1086 14 1296 富士通(日本)
ヒューレットパッカード 978 15 1225 GE
インテル 809 16 1200 リコー(日本)
テキサス・インスツルメンツ 799 17 1115 シスコテクノロジー
シーメンス 793 18 1050 本田技研工業(日本)
モトローラ 778 19 1041 富士フィルム(日本)
コダック 719 20 973 ハイニックス半導体(韓国)

表1は、2001年と2010年にUSPTOで取得した特許件数の上位20位の企業である。この10年間でどう変わったか。10年間でほぼ半数の9社が20位内から姿を消し、新たに9社が20位内への企業としてのし上がってきた。

この10年間、20位内に踏みとどまっている企業は、アメリカのIBM、インテル、ヒューレット・パッカード、GEの4社、日本のキヤノン、パナソニック、東芝、ソニー、日立、富士通の6社、韓国のサムスン電子の11社である。

20位内から陥落していった企業は、アメリカのマイクロン、ルーセント、アドバンスト・テクノロジー、テキサス・インスツルメンツ、モトローラ、コダックの6社、日本のNEC、三菱電機の2社、ドイツのシーメンスの合計9社である。

これに代わって20位内に踊りできた企業は、アメリカのマイクロソフト、シスコテクノロジーの2社、日本のセイコーエプソン、リコー、本田技研工業、富士フィルムの4社、韓国のLG電子、ハイニックス半導体の2社、台湾のホンハイ(鴻海)精密工業の合計9社である。

表2は、2010年の上位20社の特許登録件数増加率の企業別ランキングである。2001年にシスコテクノロジーとハイニックス半導体の登録件数が 筆者の調査では不明なので実数を示すことはできない。この2社は、この10年間で飛躍的に特許登録件数を増やしたことは間違いない。おそらくマイクロソフ ト社の7.8倍を上回ると思われるので最上位にランクした。

シスコテクノロジーは、コンピューターネットワークの機器で飛躍的に業績・売り上げを伸ばした企業であり、ハイニックス半導体は高用量、超小型、超電力の多様なDRAM製品群を開発して存在感を示した企業である。

このような新興勢力の中に日本企業が食い込んでいないことは非常に残念だ。

 

表2 この10年間のUSPTOへの特許登録数の増加率

2001年 2010年 企業 増加率
・・・ 1115 シスコテクノロジー
・・・ 973 ハイニックス半導体(韓国)
396 3094 マイクロソフト 7.8
248 1490 LG電子(韓国) 6
441 1438 ホンハイ精密工業(台湾) 3.3
375 1200 リコー(日本) 3.2
1450 4551 サムスン電子(韓国) 3.1
498 1443 セイコーエプソン(日本) 2.9
1149 2246 東芝(日本) 2
809 1653 インテル 2
562 1050 本田技研工業(日本) 1.9
583 1041 富士フィルム(日本) 1.9
3411 5896 IBM 1.7
1440 2482 パナソニック(日本) 1.7
1363 2150 ソニー(日本) 1.6
978 1480 ヒューレットパッカード 1.5
1877 2552 キヤノン(日本) 1.4
1271 1460 日立(日本) 1.1
1166 1296 富士通(日本) 1.1
1107 1225 GE 1.1

 

表2でみる上位20社が獲得したアメリカ特許の増加率はこの10年間で1.5倍強である。たった10年間の特許の増加率としては異常に大きい。過去にこのような増加率で増えた時代はなかったのではないか。

この10年間、世界先端企業の技術開発競争がいかに激しかったかを物語るものである。それはIT(情報科学)産業革命によって技術開発のテーマが次々と出てきたことの証拠であり、それは同時に企業間の研究開発の競争が激化したことからくる増加と見ることができる。

この10年間に飛躍的に特許件数を伸ばしたマイクロソフトとLG電子はまさにIT(情報科学)産業革命の申し子である。マイクロソフトはパソコンの基本ソフトの覇者となり、LGは液晶ディスプレイ、携帯電話、パソコンのパーツなどで急激に業績を拡大した。

また3倍以上に登録数を伸ばしたホンハイ精密工業、リコー、サムスン電子の3社もIT産業革命の波の乗った企業である。特にホンハイは、彗星のように登場してきた世界トップのEMS(Electronics Manufacturing Service)企業である。

EMS企業とは、様々な電機メーカーから製品のOEM(相手先ブランド製品の製造)生産を請け負うもので、2007年の売り上げは約6兆円に上っている。生産現場のほとんどは、生産コストの安い中国にある広範な工場群である。

日本のリコーは、複写機、ファクシミリ、レーザープリンターやそれらの複合機、デジタルカメラなど総合事務機器、光学機器などで躍進してきた。日本が構造改革に手間取っている間にも売上高を伸ばしてきた。

韓国を代表するサムスン電子も、総合家電、電子機器メーカーとして飛躍的に伸びた企業である。

20位内に踏みとどまったものの、この10年間の伸びが1割程度となって研究開発では横ばいだったのが日立、富士通、GEの3社である。いずれも総合電機メーカーであるが、IT産業革命の波に必ずしも乗ることができなかったのではないか。

また20位から陥落した企業の中で、気になるのは日本のNECと三菱電機である。入れ替わっていた企業群の消長については、また稿を改めて論評したい。

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