コラム

おごり

驕れるものは久しからず、という言葉があります。ある日、平家の落人が隠れて生き延びるために住んだといわれる所へ行きました。由緒ある旅館と見え て、平家の紋だそうですが、蝶のマークが大きく壁に貼られていました。平家落人民俗館も親戚の伯父さんがやっているとかで、この地域はほとんどが親戚だと いいますから、不思議なところです。もちろん、現在でも相当内陸部に入った所で、源平合戦の時代なら誰も訪れることが無いような僻地であったことが想像で きました。

ある学び仲間の同窓会だったのですが、ゴルフをやった連中が夜道を車で馳せ参じてまいりました。どこまで行っても旅館はおろか民家らしきものが見当たら ず、行き過ぎたのではないかと心配しながら、やっとの思いで到着したことが話題になり、このことからも大分奥地であることがお分かりでしょう。

静かに流れる川のほとりの湯の町で、湯治をするのには持ってこいの温泉です。何しろ平家の隠し湯だと聞くだけでも、なにか、疲れを癒してくれそうな感じが味わえる場所でした。長いこと隠れ住んでいて、その環境を生かして成功しているのですから、結構なことです。

そんなところで思い出したことがあります。1900年初めのある精密機械メーカの話です。この会社は時計をやっておりましたが、いち早くディジタル時計に 参入して液晶表示の時計を作り上げてきました。参入当時は小型の液晶という分野の主戦場には敵がなく、発明は刈り取り放題だったといいます。特許は相手が いない分野だったら、どんな工夫でも特許化できるといっても過言ではないのです。誰も課題に気が付かず発明をする人がいない分野でした。特許庁でいくら調 べても拒絶する理由が見当たらないので、必然的に液晶表示の相当基本的なアイデアを複数取得したのです。

現在でも液晶で大変に成功している S社からも大量な実施料を稼いでおり、S社の売上が伸びれば伸びるほど特許実施料収入が増す状況だったそうです。液晶の特許とS社のすべての分野の特許と をクロスライセンスしていたそうですが、この精密機械メーカは家庭電気製品を作るあてもないので相手の特許は要らないとフリークロスをやめたそうです。す ると、とたんに毎年100億円近い実施料が入り出したのです。

また、このメーカはインクジェットでも他社から実施料が入る特許を持っていたのです。インクジェットプリンタではC社の売上が増加すれば、この精密機械メーカの財布を潤すことになるのだそうです。

こうした状況が続いていたため、どこか油断が出てきており、特許なんてどうってことはないといったおごりが社内にあったといいます。液晶表示やインク ジェットプリンタのような分野が、海のものとも山のものとも判断がつかない時点に資金を投入して、怖さ知らず、夢中でやってきた結果が当時の実施料の基盤 になっていたのです。そうした意気込みがこのところ失せてきたというのです。成功している時にこそ、次の手を打たねばならない。平家の落人部落のように ひっそりと、したたかに出来るでしょうか。

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