コラム

『反不正当競争法』(2025年改正)における「データ条項」の解読

馮超 森康晃 鄧思涵
泰和泰(北京)法律事務所

デジタル経済時代において、データは事業者にとってますます重要な生産要素となっており、データ資源の取得および利用は極めて重要な資源配分手段の一つとなっている。

『中華人民共和国反不正当競争法(2025年改正)』第13条第3項は、新たに「データ条項」を追加し、データ権益を侵害する不正競争行為について特別規定を設けた。
すなわち、事業者は、詐欺、強迫、技術的管理措置の回避または破壊その他の不正な手段により、他の事業者が適法に保有するデータを取得または使用し、他の事業者の適法な権益を侵害し、市場競争秩序を混乱させてはならないとされた。
本条項が保護対象とするのは、「他の事業者が適法に保有するデータ」である。
データの生成主体および利用主体の多元化により生じうるデータ所有権をめぐる紛争を回避するため、本条項が保護する利益は、データそのものの所有権ではなく、事業者が実質的な投入に基づいて形成した商業的価値を有するデータに対する支配・利用利益である。
したがって、「適法に保有するデータ」であるためには、「適法な保有」および「競争利益」という二つの要件を備えている必要がある。

1. 「適法な保有」および「競争利益」
司法実務において、原告はまず、自らが対象データに対して安定的かつ適法な支配状態を有し、その主張するデータ権益に正当な根拠があることを証明しなければならず、そのうえで初めて裁判所は被告の行為が不正競争に該当するか否かを審理することができる。[1]
具体的には、データの適法な保有には、データに対する実際の支配能力と、データ取得源の適法性が求められる。

(1)データに対する実際の支配能力
データの保有には、データに対する事実上の支配状態が存在することに加え、それを支配する意思が求められる。
例えば、技術的手段によりユーザーデータを収集、保存、伝送し、任意に呼び出すための条件および能力を有し、かつユーザーデータについて一定の保護措置を講じることで、第三者による不法な干渉を排除している場合などがこれに該当する。

(2)データ取得源の適法性
データの適法な取得源には、法令上の根拠、契約上の約定、および事実上の根拠が含まれる。
法令上の「適法な保有」とは、事業者が法律または行政法規の直接の規定または授権に基づいてデータを保有・支配することをいう。
例えば、気象部門が『気象法』に基づいて気象データを収集、処理および公表する場合、当該データの保有には疑いのない法的根拠が存在する。[2]

事実上の根拠とは、主として投入および支配に基づく保有を指す。
このようなケースは、公開チャネルを通じてデータを収集した場合や、事業者の営業活動に伴ってデータを保有する場合に多く見られる。
契約上の約定に基づく場合とは、事業者がデータ提供元との契約を締結し、合意された範囲内でデータを取得、利用および支配することをいう。

事業者がデータ生成主体の授権を得てデータを取得する典型例としては、インターネットプラットフォーム事業者がネットワーク利用者との間で締結するユーザー契約またはプライバシーポリシーがある。

このような契約においては、個人情報収集の目的、方法および範囲について利用者に明確に通知し、「知情・同意(十分な説明と同意)」の原則および「合理性・必要性」の原則を遵守しなければならない。

①「知情・同意」の原則
『民法典』第1035条は、個人情報を取り扱う場合には当該自然人の同意を取得し、取扱規則を公開し、情報処理の目的、方法および範囲を明示し、かつ法律、行政法規および当事者間の合意に違反してはならないと規定している。
ネットワーク利用者の情報の多くは個人情報に該当するため、ネットワークプラットフォーム事業者は、「知情・同意」の原則に従って利用者情報を収集しなければならない。

某テクノロジー会社と某文化メディア会社との不正競争紛争事件[3]において、某テクノロジー会社は甲APPの運営者であり、某文化メディア会社は乙APPの運営者であった。
乙APP上には、甲APPのショート動画と一致する対象動画50,392件が存在し、その中には甲APP固有のコードも含まれていた。
また、対象動画には19,079件のAPPユーザーのニックネーム、プロフィール画像等の登録情報が含まれており、そのうち15,924件は甲APPと一致していた。
さらに、127か所のコメント内容、順序および句読点も甲APPと同一であった。
北京市海淀区人民法院は、某テクノロジー会社がネットワーク利用者とのユーザー契約を通じて、利用者の同意を得たうえで個人情報および対象動画コメントのテキスト内容を収集・利用しており、19,079件のAPPユーザーのニックネーム、プロフィール画像等の登録情報および対象動画のコメント内容は甲プラットフォームのデータを構成すると判断した。

②「合理性・必要性」の原則
『民法典』第1035条は、個人情報の取扱いにおいて適法性、正当性および必要性の原則を遵守しなければならないと規定している。
そのため、ネットワークサービス提供者は利用者の個人情報を収集する際、必要性の原則に従う必要がある。
『個人情報保護法』第13条第1項第2号は例外事由として、個人が当事者となる契約の締結または履行のために必要な個人情報の処理については、本人の同意を要しないと規定している。

羅某と某ソフトウェア会社との個人情報権益侵害紛争事件[4]において、某ソフトウェア会社は某学習ウェブサイト(以下「対象サイト」という。)を運営しており、羅某が登録時に、「職業」「学習目的」「学齢段階」「英語レベル」等のユーザープロファイル情報の入力を求められた。
当該情報を入力しなければ登録手続きを進めることができず、その過程において「スキップ」や「拒否」の選択肢も存在せず、個人情報収集への同意を求める表示もなかった。
某ソフトウェア会社は、ユーザープロファイル情報の収集は自動化意思決定によるサービス提供に必要であり、利用者の同意は不要であると主張した。
北京インターネット法院は、当該情報処理が欠けることにより、契約で約定された基本機能サービスまたは利用者が自主的に選択した付加機能サービスを実現できない場合に限り、「契約締結・履行に必要」と認定できると判断した。
国家インターネット情報弁公室、工業・情報化部、公安部、国家市場監督管理総局が公布した『一般的な種類のモバイルインターネットアプリケーションに必要な個人情報の範囲に関する規定』(国信弁秘字〔2021〕14号)を参照し、学習教育系APPの基本機能サービスは「オンライン指導、オンライン授業等」であり、必要な個人情報は登録利用者の携帯電話番号であるとされた。
対象サイトは教育系ウェブサイトであり、その基本機能には自動化意思決定による情報推奨は含まれないことから、裁判所は、某ソフトウェア会社による羅某のユーザープロファイル情報の無断収集行為は、羅某の個人情報権益を侵害すると認定した。

(3)競争利益
データが競争利益を有するとは、事業者が自己の労働、資本、技術等の実質的投入を通じて、適法にデータを収集、整理、加工および維持し、その結果としてデータに対する実際の支配と安定した利益期待を形成していることをいう。
保護対象となるデータは通常、事業者が大量の人的・物的・財務的資源および時間を投入して形成したデータ集合である。[5]
事業者が、関連データの収集、保存、加工のために実際に人的、技術的または資金的コストを投入したこと、かつ当該データが特定の利用場面において現実的または潜在的な経済的利益をもたらすことを立証した場合、一般にそのデータはプラットフォームに競争優位をもたらすものと認定される。[6]
前述の某テクノロジー会社と某文化メディア会社との不正競争紛争事件[7]において、北京市海淀区人民法院は、某テクノロジー会社が甲プラットフォーム全体のショート動画の収集・支配者として、ショート動画全体の収集、保存、加工、伝送および表示の過程において多大なコストを投入しており、当該ショート動画全体について重要な営業上の利益を有すると判断した。

もっとも、利用者が登録、閲覧、インタラクティブ参加等の行為を通じてネットワークプラットフォーム上に残した原始データについて、プラットフォームが収集後に追加的な運営・保護コストを投入せず、独立した競争利益を形成していない場合には、プラットフォームが権利を主張するという理由のみで排他的保護を与えるべきではない。
そうでなければ、データの閉鎖化およびデータ独占を招きやすく、デジタル経済の健全な発展に不利となる。

某コンピュータ会社と某ネットワーク会社との著作権侵害および不正競争紛争事件[8]において、某コンピュータ会社は対象ゲームの著作権および運営権を有していた。
某ネットワーク会社は、自ら運営する5Gクラウドゲームプラットフォームに対象ゲームソフトをプリインストールし、ゲーム利用者は対象ゲームAPPをダウンロードすることなく、当該プラットフォーム上で直接ログインして対象ゲームを実行できた。
利用者は当該クラウドゲームプラットフォームの利用時に、登録情報やゲームデータ等の収集について某ネットワーク会社に同意・授権していた。
広州インターネット法院は、ゲーム利用者のアカウント情報およびゲーム参加に関する関連データはいずれも原始データに属し、その形成過程において利用者が主導的役割を果たしていると判断した。
また、某ネットワーク会社は利用者の授権を得てこれらのデータを収集しており、某コンピュータ会社の保護措置を破壊しておらず、同社によるゲーム利用者データの収集・利用を妨げることも、対象ゲームの正常な運営に影響を与えることもなかったとして、当該データ収集行為は不正競争に該当しないと認定した。

2. 不正なデータ取得・利用の認定
『反不正当競争法』(2025年改正)第13条第3項は、不正なデータ取得・利用の典型的な態様として、詐欺、強迫、技術的管理措置の回避または破壊の三類型を明示的に列挙し、さらに末尾に「等」を加えることで、次々と現れる新たな技術手段に対応している。

詐欺とは、偽装ウェブサイト、フィッシングメール、欺瞞的なユーザー契約等により、事実を偽り、真実を隠して他人のデータを取得することをいう。
強迫とは、加害行為を用いるか、または優越的地位や技術的手段を利用して、他者にデータ提供を強制することをいう。
技術的管理措置の回避または破壊とは、他者が権利を示すために講じた技術的または管理的措置を回避または解除してデータを取得することをいう。[9]
前二者は比較的強い帰責性を有するが、第三の類型は状況がより複雑であり、このような場合およびその他の不正なデータ取得行為の認定は、その帰責性の立証に依拠することとなる。

もし、プラットフォームの制限措置に違反するデータスクレイピング行為を一律に違法とみなし、その実際の損害程度を具体的に評価せず、あるいは明確な基準を設定しなければ、プラットフォームによるデータへのコントロール権を強化してしまう恐れがある。
これはプラットフォームに対して、データの開放権限を一方的に決定する能力を付与することになり、結果としてデータの流通と価値の解放を阻害することになる。[10]

技術的管理措置の回避または破壊の認定にあたって、司法実務において考慮される要素としては、以下の点が挙げられる。
第一に、データ保有者がデータの管理および保護のために実際に技術的管理措置を講じているかどうか。
第二に、取得行為が当該技術的管理措置を回避する方法によるものか、あるいは対抗的に破壊する方法によるものか。
第三に、因果関係、すなわち当該行為が実際にデータ保有者の意思に反してデータを取得したかどうかである。

孔祥俊教授は、データ情報に関連する保護措置には多様な形態があり、それぞれ異なる保護目的および要件を有すると指摘している。
『反不正競争防止法』(2025年改正)の「データ条項」における技術的措置または管理措置は、『著作権法』『個人情報保護法』『サイバーセキュリティ法』にいう技術的管理措置とは異なるものである。
「データ条項」における技術的管理措置は、高度な技術基準を満たす保護措置に限定されるものではなく、その他の管理措置を含み、あるいは技術的な管理措置を指す場合であっても、非技術的な管理措置(例えば、クロール禁止を示すrobots.txtプロトコル)を排除するものではない。
「データ条項」における保護措置は、権利の主張を示す最低限の程度に達していれば足り、必ずしもデータ情報の取得を防止できる程度に達していることまでは要求されない。[11]

(1)データ取得行為の不正性の認定
データ取得行為(データスクレイピング)は、本質的には機械およびプログラムによってユーザーのアクセス行動を模倣する技術形態であり、高効率かつ低コストでデータを選別・抽出・集約し、後続利用に必要なデータを形成することを可能にする。
データ取得の技術的方法にはさまざまなものがあり、一般的には以下のものが含まれるが、これらに限られない。

ネットワーククローラー(Web crawler)は、プログラムによってブラウザの動作を模倣し、対象ウェブサイトにHTTPリクエストを送信してHTMLコンテンツを取得し、必要なデータを解析・抽出するものである。通常、ニュース記事、商品情報、公開データ等の静的ウェブページの取得に適用される。

APIインターフェース呼び出しは、ウェブサイトまたはプラットフォームが提供する公開APIを利用し、HTTPリクエストを通じてJSONやXML形式の構造化データを取得するものである。
通常、ソーシャルメディア、気象サービス、ECプラットフォームの商品データ等、公開APIを有するプラットフォームに適用される。

ブラウザ自動化ツールは、クリック、入力、スクロール等のユーザー操作を模倣することにより、動的に読み込まれるページデータを取得するものであり、通常、複雑な動的ウェブページに適用される。
データ取得行為に対する一般的な防止措置としては、robotsプロトコルの設定、動的IP遮断、リクエスト頻度制限、User-Agent識別および遮断、HTMLタグの不定期変更、パスワード認証等がある。

前述のとおり、有効な防取得措置に対して対抗的にこれを回避または破壊し、あるいはこれと同等の性質を有する行為を実施し、その結果としてデータ保有者の意思に反してデータを取得・利用した場合にのみ、「データ条項」が定める行為要件を満たし、不正性が認定されるべきである。

某ネットワーク会社と某情報会社との不正競争紛争事件[12]において、某ネットワーク会社は対象SNSプラットフォームの運営者であり、某情報会社はiDataAPIサイトの運営者であった。
ネットユーザーはiDataAPIサイトが提供するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じて対象SNSプラットフォーム上の大量のデータを取得することが可能であり、その範囲は対象SNSプラットフォームのウェブページ上の全内容にとどまらず、運営管理過程における大量のバックエンドサービスデータをも含み、それらを保存・販売していた。

広東省高級人民法院は、某情報会社がiDataAPIプログラムを多数の異なる実在ユーザーのSNSアカウントに偽装し、一定の技術的破解手段を用いて対応するデータインターフェースのアドレスを取得し、某ネットワーク会社のサーバーがユーザー端末にデータを送信する専用インターフェースの呼出権限を不正に取得したと認定した。
裁判所はこれに基づき、某情報会社によるデータ取得行為には不正性があると判断した。
データ取得行為が正当か否かを判断するにあたっては、まず取得手段が正当であるかを検討する。
通常、事業者がアクセス権限を設定した非公開データを取得する場合には、必然的に事業者の技術的管理措置を回避または破壊することになるため、不正な取得行為と認定される。

しかし、他者が事業者の公開データを取得する場合に、その手段が正当であるときは、取得されたデータの数量、規模、価値、および取得者のその後の利用行為がデータ保有者の適法な利益に損害を与えるかどうか等の要素を総合的に考慮し、その正当性をさらに判断する必要がある。
某ネットワーク会社と某技術会社との不正競争紛争事件[13]において、北京市海淀区人民法院は、某技術会社が対象データ中の公開データを正当なウェブクローラー技術によって取得したと主張したものの、その取得行為が某ネットワーク会社のサーバーに通常どおり記録されていなかったことから、身元を明示したウェブクローラーまたはその他の通常のアクセス行為によって取得したものではないと判断した。

対象データの量が大規模であるという事実も踏まえ、某技術会社はユーザーとしてログインしたように偽装し、またはユーザー行動を模倣して某ネットワーク会社のバックエンドサーバーにリクエストを送り、ブラウザのルールに従って解析を行う等の技術的手段によって公開データを取得したものと認定され、このような手段には正当性が認められないと判断した。

もっとも、『反不正当競争法』は権利保護法ではない。
司法実務において、裁判所がインターネット関連の競争行為を反不正当競争法によって調整する際には、静的利益や商業的成果を過度に重視するのではなく、競争手段の正当性および競争メカニズムの健全性に立脚し、市場競争の根本的目的をより重視する。
通常は、ウェブサイト運営者の自主的経営権の保護と、他の事業者の利益、消費者の適法な権益および競争秩序の維持との間で均衡を図ることとなる。

3.損害結果
『反不正当競争法』(2025年改正)第13条第3項に定める損害結果要件とは、他の事業者の適法な権益を侵害し、市場競争秩序を乱すことである。
他の事業者の適法な権益の侵害には、他人のトラフィックおよび取引機会の奪取、他人の運営コストの増加および運営能力の低下、他人によるネットワークセキュリティ維持およびユーザー・プライバシー保護義務の履行の妨害、ユーザーの粘着性および評価の低下、信用毀損、広告収入および会員費収入の減少等が含まれる。

市場競争秩序の混乱には、業界の需給メカニズムの破壊、市場資源配分の不均衡、市場取引コストの増加、業界ルールの破壊等が含まれる。
同時に、不正競争行為は消費者の適法な権益を侵害する可能性もあり、例えばネットユーザーのプライバシー権・知る権利の侵害、消費者の選択肢の減少、製品またはサービスの品質低下や価格上昇等が挙げられる。

某テクノロジー会社と某技術会社との「変身漫画エフェクト」に関する不正競争紛争事件[14]において、北京知識産権法院はまず、某テクノロジー会社が変身漫画エフェクトモデル(以下「対象モデル」という)に対して競争利益を有するかを分析し、某テクノロジー会社が当該モデルの研究開発のために大量の経営資源を投入し、その生成効果も継続的に最適化されてきたことを認定した。
また、変身漫画エフェクトモデルはデータ学習およびチューニングを経たパラメータと構造により、ユーザーが某音APPを利用する際に本人に対応するアニメキャラクターを生成できるようにし、某テクノロジー会社に革新的優位性、営業収益および市場利益をもたらしていることから、当該モデル(構造およびパラメータ)は『反不正当競争法』によって保護される競争利益を構成すると判断した。

次に、某技術会社が使用した被疑モデルは、技術的実現方法において対象モデルと高度に同一であり、生成されるエフェクト製品の結果も極めて類似していたうえ、同社は当該モデルおよび学習データが自社の研究開発活動に由来することを証明できなかった。
裁判所はこれに基づき、某技術会社が対象モデルを直接使用したと認定した。

最後に裁判所は、被疑モデルが対象モデルに対して強い代替効果および顧客分流効果を有し、某テクノロジー会社の競争利益に実質的損害を与えたのみならず、変身漫画エフェクトモデルの正常な需給メカニズムを歪め、AIモデルに関する経営活動および健全で秩序ある競争秩序を混乱させ、消費者の将来的な選択肢にも影響を及ぼすと判断した。
これにより、被疑行為は不正競争を構成すると認定された。

以上を総合すると、裁判所は『反不正当競争法』(2025年改正)第13条第3項を適用してデータ競争行為が不正競争に該当するかを判断する際、通常、権益の適法性、行為の不当性、損害結果、各当事者利益の衡量という裁判上の論理的ステップに従って判断している。
同時に、データ保護立法が重視するのはデータの流通および利用であり、コントロールや権利付与も、より良いデータ共有のために行われるものである。

したがって、法的保護においてはその範囲および強度を制限し、データ共有およびパブリック・ドメインのための十分な空間を残し、過度な独占的支配権を付与することを防止し、他の公共政策の実現のために必要かつ合理的な利用を認める必要がある。[15]
孔祥俊教授は、「データ条項」には明文上の保護例外は設けられていないものの、法適用上の例外として以下のような場合が含まれると指摘している。

①取得または利用したデータの量が、実質的損害を生じさせるに足りない場合。
例えば、裁判例においてよく用いられる「権利者の営業活動を実質的に代替するに足りない」場合。
②取得または利用したデータが、権利者の通常の営業活動と競合せず、権利者の営業利益を実質的に損なわない場合。
③誠実信用および商業道徳に反しない方法で他人のデータを取得または利用するその他の場合。
これは包括条項を残すことにより、公共利益の促進等を目的としたデータの合理的利用のための余地を確保するものである。[16]

4.損害賠償責任
データに関する不正競争行為による損害賠償責任の算定は、なお権利者の実際の損失または侵害者が侵害によって得た利益を基準として決定される。
いずれも確定が困難な場合には、裁判所は500万元以下の賠償を命じることができる。
法定賠償額の考慮要素には、データの種類、ユーザー数および知名度、権利者によるデータ収集・処理への投入コスト、侵害者の主観的故意、侵害の継続期間・範囲・影響等が含まれる。
司法実務においては、権利者が被ったトラフィック減少、広告収入減少、ユーザー粘着性低下、信用毀損等の損失は定量化が困難であり、また侵害者は通常、実際の侵害利益に関する証拠を提出しない。

『最高人民法院による民事訴訟証拠に関する若干の規定』第95条は、「一方当事者が証拠を支配し、正当な理由なくこれを提出しない場合であって、当該証拠によって証明される事実について立証責任を負う当事者が、その証拠内容が支配者に不利であると主張するときは、人民法院は当該主張の成立を認定することができる」と定めている。
権利者は、この証明妨害ルールを利用し、自らの損失または侵害者の利益について立証責任を尽くしたことを主張することができる。
例えば、広告損失やユーザーアクティブ度低下に関する鑑定・評価報告書、侵害者サイトのアクセス数増加、販売数量および販売額、宣伝時に公表された売上高、同業他社の利益率等の証拠を提出したにもかかわらず、侵害者が会計帳簿等の証拠提出を拒否した場合には、権利者が提出した証拠に基づいて損害賠償額を認定すべきであると主張することができる。

前述の某ネットワーク会社と某情報会社との不正競争紛争事件[17]において、某情報会社はiDataAPIサイト上で、対象SNSプラットフォームのインターフェース呼出総回数および100回あたりの利用料金を公表しており、2019年5月29日時点で呼出回数は21億回を超えていた。
深圳市中級人民法院はこれに基づき、侵害利益が約2,000万元を超えると算定した。

さらに、某情報会社の不正競争行為の類型の多さ、悪意ある技術手段の採用、侵害継続期間の長さ、データ呼出規模の巨大さ、損害結果の重大性等を総合考慮し、某ネットワーク会社の請求した2,000万元の賠償を全額認容した。
某情報会社は第一審判決の賠償額を不服として広東省高級人民法院に控訴したが、同法院は、某情報会社にはAPIインターフェースの具体的呼出回数および収入状況、詳細なインターフェース呼出記録および課金記録、ならびに関連する財務帳簿・資料等を提出する能力が十分にあったと認定した。

しかし、某ネットワーク会社が明確に2,000万元の損害賠償請求額およびその計算方法、関連証拠を提示したにもかかわらず、某情報会社は熟慮のうえで依然として口頭で反論するのみで、具体的な財務証拠を一切提出せず、第二審においてもなお立証を怠った。
訴訟上の誠実信用の原則に基づけば、このような場合には某ネットワーク会社ではなく某情報会社が不利推定による法的効果を負担する方が、より公平かつ合理的であるとされた。
裁判所は最終的に控訴を棄却し、原判決を維持した。

[1] 徐俊:『反不正競争法データ保護専款の司法適用研究』、https://mp.weixin.qq.com/s/luFi1o9mb7ohLRXcQWeJbA、最終アクセス日:2026年5月9日。
[2] 徐俊:『反不正競争法データ保護専款の司法適用研究』、https://mp.weixin.qq.com/s/luFi1o9mb7ohLRXcQWeJbA、最終アクセス日:2026年5月9日。
[3] 北京市海淀区人民法院(2019)京0108民初35902号判決、北京知識産権法院
(2021)京73民終1011号判決。
[4] 北京インターネット法院(2021)京0491民初5094号判決、北京市第四中級人民法院(2022)京04民終494号判決。
[5] 徐俊:『反不正競争法データ保護専款の司法適用研究』、https://mp.weixin.qq.com/s/luFi1o9mb7ohLRXcQWeJbA、最終アクセス日:2026年5月9日。
[6] 林新宇:『新反不正競争法中プラットフォームユーザーデータ保護の法律適用研究』、https://mp.weixin.qq.com/s/Fp7NbDbkJ7nJ7B8L6kFihg、最終アクセス日:2026年5月9日。
[7] 北京市海淀区人民法院(2019)京0108民初35902号判決、北京知識産権法院(2021)京73民終1011号判決。
[8] 広州インターネット法院(2020)粤0192民初20405号判決。
[9] 徐俊:『反不正競争法データ保護専款の司法適用研究』、https://mp.weixin.qq.com/s/luFi1o9mb7ohLRXcQWeJbA、最終アクセス日:2026年5月9日。
[10] 徐俊:『反不正競争法データ保護専款の司法適用研究』、https://mp.weixin.qq.com/s/luFi1o9mb7ohLRXcQWeJbA、最終アクセス日:2026年5月9日。
[11] 孔祥俊:『「インターネット専条」と「データ保護専款」:画竜点睛と立法の突破——新改正<反不正競争法>釈評の二』、https://mp.weixin.qq.com/s/YolH7cS1YYkTofnK4ZSwdw、最終アクセス日:2026年5月11日。
[12] 広東省高級人民法院(2022)粤民終4541号判決。
[13] 北京市海淀区人民法院(2017)京0108民初24512号判決。
[14] 北京知識産権法院(2023)京73民終3802号判決。
[15] 孔祥俊:『「インターネット専条」と「データ保護専款」:画竜点睛と立法の突破——新改正<反不正競争法>釈評の二』、https://mp.weixin.qq.com/s/YolH7cS1YYkTofnK4ZSwdw、最終アクセス日:2026年5月11日。
[16] 孔祥俊:『反不正競争法』データ保護専款の法律構造—行為規制とデータ権限付与の二元的一致、https://mp.weixin.qq.com/s/LSI1G33puBI2BYD7oiiIIQ、最終アクセス日:2026年5月11日。
[17] 広東省高級人民法院(2022)粤民終4541号判決。

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