コラム

総選挙の争点と隠れた政策課題
内閣府の社会意識に関する世論調査から考える

総選挙の争点が明確になっている
高市首相と自民・維新の政権与党の信を問う衆院総選挙が公示され、1,285人が立候補した。
通常国会の冒頭の解散という異例の総選挙であり、高市総理が言うように「首をかけた」闘いであり、激戦がヒートアップしている。
メディア報道の情報から主張点の主要項目を整理してみると、主な争点は筆者の視点では次の3項目になった。争点がはっきりした選挙であり、国民にとっては分かりやすい政治選択でもあると思う。

* 税制・家計支援
   消費税をどうするのか。その扱いについて最大の政策争点になっている。
   与党は、時限的なゼロ税率や負担軽減政策を主張し、野党の主な主張は、恒久的削減や廃止になっている。
   また子育て支援や社会保険料の負担軽減も各党で様々な政策を主張している。
* 社会保障・労働問題
   週休3日制、定年制見直し、現役支援など労働政策の抜本的見直しを主張する政党が多い。
* 外交・安全保障
   与党が防衛政策の強化を明確に訴えてきた。野党・中道は現実路線での安全保障の維持を主張している。

このほかの主張で目立つのは移民政策の見直しである。
欧州・米国で重大な政策課題となっていたものが、近年、日本でも大きな問題として浮上してきた。

ただ、各政党の公式マニフェストは、選挙中でも随時更新される可能性があり、財源確保や実施時期など細部にわたる制度設計は、各党の公式サイト等で個別に確認する必要があるだろう。

国民の社会意識の調査とどう違うか
内閣府が毎年、年末にかけて実施している「社会意識に関する世論調査」に出ている国民の問題意識と、どう違うか。
2025年12月19日に発表された「社会意識世論調査結果」と選挙の公約とを比べてみた。

内閣府が毎年実施している世論調査であり、2025年度調査は昨年10月23日から11月30日まで日本国籍を持つ全国18歳以上の3,000人を対象に、郵送法によって実施した調査結果である。
その速報値を調べた。
「社会意識に関する世論調査」(令和7年10月調査)概略版

「満足」、「ある程度満足」は半数超える
全体的な意識として、日本の社会状況に満足している人が半数を超えていたが、その一方で今後の状況に悲観的な見方をする人もかなりの割合で出ている。
設問の中で「現在の社会に全体として満足しているか。それとも、満足していないか。」がある。
・「満足している」と答えた人は3.2%
・「ある程度満足している」は50.6%
・「あまり満足していない」35.5%
・「満足していない」9.8%
・「無回答」0.9%
だった。
半数以上が「満足している」という結果だが、これは1年前の調査結果(「満足している」3.0%、「ある程度満足している」50.4%)とほとんど変わりはない。
しかし国民のほぼ半数は満足していないとも言えるので、この数字は重い意味がある。

日本人の「深層意識」はどうか
社会状況の中で、最近7年間の「良い方向に向かっている分野」、「悪い方向に向かっている分野」という大局的な動向を調べた結果がある。
これは「良い方向」「悪い方向」の分野を複数選択してあげてもらう調査である。
ジャーナリストの小岩井忠道氏(元共同通信社メディア局長)が検証した2つの分野の割合の推移を示す一覧表を紹介したい。
これを見ると国民の深層意識とも言える状況が読み取れるからだ。
「良い方向に向かっていると思われる分野」を12分野から複数選択してもらう設問がある。
別表で見るように「防災」を選んだ人が21.6%、次いで「医療・福祉」20.6%だった。

良い方向に向かっている分野
(調査年度欄の数値はその分野を挙げた人の割合%)

科学ジャーナリスト・小岩井忠道氏作成・提供

さらに「教育」15.7%、「治安」15.3%、「雇用・労働条件」14.4%、「科学技術」14.2%、「外交」13.3%、「文化」11.8%、「交通秩序」11.5%、「国際化」10.7%、「防衛」10.6%、「通信・運輸」10.0%と続いている。
「特にない」とした割合は25.0%で、横ばい推移と解釈した。

これを直近6年間の推移動向を見て、よい方向に向かっている期待度が大きくなっているのを筆者自身の経験や直感、身体で直接感じ取った雰囲気や印象に基づいた肌感覚で出してみた。
良い方向に向かっている割合が比較的大きい分野には「」、割合が横ばいの分野は「」、よい方向に向かっていない分野は「」とした。

この見方は、人それぞれだから正否ではなく見解である。
筆者は調査の経年推移に、世の中の動きを重ねて私的見解として出したものだが、「雇用・労働条件」だけは、よい方向に向かっているが、ほかは現状維持か悪い方向になっていると診断した。
小岩井氏は「今後の状況に対する期待の乏しさを示している」と語っており、筆者の見方と似ていると思う。

悪い方向に向かっている分野の解析
もう一つの設問で悪い方向に向かっている分野を、14分野の中から複数選択してもらう調査結果だ。

悪い方向に向かっている分野
(調査年度欄の数値はその分野を挙げた人の割合%)

科学ジャーナリスト・小岩井忠道氏作成・提供

30%を超える悪い状況
分析を試みている小岩井氏は、悪い方向に向かっている分野として、73.1%が「物価」を挙げたのをはじめ、「景気」51.8%、「国の財政」40.6%、「経済力」37.7%、「治安」37.7%、「食糧」35.5%、「地域格差」31.8%、「自然環境」30.4%と指摘する。
「現在の日本の状況について、悪い方向に向かっていると30%を超える人々が挙げている分野が、8分野もあることが分かる」と懸念するコメントを語っている。
20%以上の人が挙げた分野は、「医療・福祉」、「雇用・労働条件」、「資源・エネルギー」、「土地・住宅」、「社会風潮」、「防衛」の6分野になっている。
さらに2019年以降今回までの7回の調査結果で、今回、最高の割合となったのが「物価」「治安」「食糧」「自然環境」「医療・福祉」「土地・住宅」の6分野にも上ると指摘し「今後に対する懸念大きさを示している」と小岩井氏は語っている。

筆者は直近6年間の調査結果の推移を見ながら、「悪い方向に向かっている」を挙げた回答者の「推移動向」を判断した。
それが次の表である。
先にも述べたように正否の問題ではなくこの調査結果に対する筆者の判断であり見解である。

さて内閣府による多岐にわたる社会状況満足度・世論調査結果と、今回の選挙の争点と重ねてみると、必ずしも一致しているわけではない。
それは政策すべてを俎上に上げて選挙戦を戦うわけではないので当然のことだが、その中でも先に筆者が上げた三大争点の①税制・家計支援、②社会保障・労働問題、③外交・安全保障問題は、関心が高い分野であり勝敗を左右するものになるだろう。
選挙結果から、内閣府の国民の社会状況満足度を振り返って検証することにしたい。

※小岩井忠道氏作成・提供の表の出典
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 客観日本
2026年01月26日
https://www.keguanjp.com/kgjp_jish/imgs/2026/01/20260126_1_01.pdf

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