コラム

「商標登録出願に関する早期審査弁法」が公布、不許可の場合は5営業日以内に通知へ

馮超 森康晃 薛蓮
泰和泰(北京)法律事務所

 

中国国家知識産権局は2022118日に「商標登録出願に関する早期審査弁法(試行)」(以下「試行弁法」という)を発表し、20244月からその改正作業を開始しました。国家の質の高い発展を支え、国家利益・公共の利益および主要地域発展戦略に関わる分野の保護を強化するため、同局はこのたび正式に「商標登録出願に関する早期審査弁法」(以下「本弁法」という)を公布しました。

新たに発表された「本弁法」は、早期審査の適用範囲、出願可能な商標の種類、受理される商品・役務の名称、審査手続などの面で、「試行弁法」に対し最適化または拡充が図られています。以下に主な改正内容を整理します。

 

.早期審査の対象となるケースの拡大

2条では、早期審査を請求できる場合が追加され、次の2つのケースが新たに盛り込まれました:

  • 商業宇宙、低空経済、深海技術などの戦略的新興産業、およびバイオ製造、量子技術、エンボディドAI6Gなどの将来産業に関わり、かつ商標専用権の早期取得が強く求められる場合。
  • 省レベル人民政府が推進する現代産業体系、または新たな生産力の発展に資する産業チェーンに関わり、既に商標が使用されている場合。

 

.早期審査対象となる商標の種類の拡充

「本弁法」によれば、出願する商標が文字・図形・アルファベット・数字、またはこれらの要素の組み合わせであれば、早期審査を申請できます。
これは、文字商標のみに限定されていた「試行弁法」よりも範囲が拡大されたことになります。
ただし、全ての出願人の同意があり、電子申請方式を採用し、優先権主張がないことが、早期審査を受けるための条件とされています。
この改正は、実務のニーズに対応したものであり、早期審査制度の柔軟性と現実的な適応力を高める内容となっています。

 

.指定商品・役務の名称範囲の拡大

「本弁法」では、指定商品または役務名称の要件も緩和されました。
「試行弁法」では『類似商品及び役務区分表』に掲載された標準名称に限定されていましたが、「本弁法」では国家知識産権局が公開する受理可能な商品・役務名称まで適用範囲が拡大されました。
ただし、出願する商標の指定商品・役務が第2条に規定された状況に該当しない場合、または非標準的な名称で国家知識産権局が公開していない場合は、「本弁法」は適用されず、通常の審査手続による対応となります。

 

.早期審査が不許可となる場合の通知期限を初めて明確化

従来の「試行弁法」では、早期審査を認める場合には20営業日以内に審査を完了すべきと規定されていましたが、不許可の場合の対応期限については明記されていませんでした。
今回の「本弁法」では、早期審査を認めない場合、5営業日以内に申請人に通知しなければならないと初めて明確に定められました。
この新たな規定は、審査手続の透明性と効率性を一層高めることにつながります。

 

まとめ

「本弁法」の公布は、国家戦略および市場ニーズを支える早期審査制度の制度的な最適化・高度化であり、商標登録の利便性をさらに高めるとともに、重点産業・重点プロジェクトに対する知的財産保護の強化にも寄与するものと期待されます。

 

添付資料:「商標登録出願に関する早期審査弁法」改正対照表

商標登録出願に関する早期審査弁法(試行)

商標登録出願に関する早期審査弁法

 

第1条 国家の高品質な発展に奉仕し、知的財産権分野における「放管服」改革(行政の簡素化権限の移譲、権限移譲と管理の結合、サービスの最適化―訳注)」)の政策決定を実施し、法に基づいて国家利益、社会公共利益又は重大地域発展戦略に関わる商標登録出願の審査を迅速化するため、「中華人民共和国商標法」及び「中華人民共和国商標法実施細則」の関連規定に基づき、商標関連業務の実務と結び付け、本弁法を制定する。

第1条 国家の高品質な発展に奉仕し、知的財産権分野におけるイノベーション環境とビジネス環境の最適化に関する改革方針を実施し、知的財産権の審査品質および審査効率の継続的な向上を図り、商標ブランド戦略の深度ある実施を推進し、国家利益、社会公共利益または重大地域発展戦略に関わる商標登録出願を法に基づき早期審査するため、審査方式を革新し、審査手続を改善し、「中華人民共和国商標法」及び「中華人民共和国商標法実施条例」の関連規定に基づき、商標関連業務の実務と結び付け、本弁法を制定する。

第2条 次の各号のいずれかに該当する商標登録出願については、早期審査を請求することができる。

(一)国家又は省レベルの重要なプロジェクト、大型プロジェクト、重要な科学技術インフラ施設、重要なイベント・競技、重要な展示会等の名称に関するもので、かつ、商標権の保護が緊急性を有する場合

(二)非常に深刻な自然災害、非常に深刻な事故・災害、非常に深刻な公衆衛生事件、非常に重大な社会安全保障事件等、緊急事態の発生時であって、当該緊急事態への対応に直接的に関連する場合

(三)良質な経済発展及び社会発展に資するため、及び、「知的財産権強国建設綱」の実施を促進するための確かな必要性がある場合

(四)その他、国家利益、社会公共利益又は重要な地域開発戦略を順守する上で、重要で実質的な意義が存在する場合

第2条 次の各号のいずれかに該当する商標登録出願については、早期審査を請求することができる。

(一)商業宇宙、低空経済、深海技術等の国家戦略的新興産業、およびバイオ製造、量子技術、エンボディド・インテリジェンス、6G等の未来産業に関するもので、かつ商標専用権の早期取得が急務である場合
(二)国家または省レベルの重要なプロジェクト、大型プロジェクト、重要な科学技術インフラ施設、重要なイベント・競技、重要な展示会及び重要文化遺産に関わるもので、かつ商標権の保護が緊急性を有する場合
(三)省レベル人民政府が推進する現代的産業体系の構築、および新たな生産力発展に向けた産業チェーンに関するもので、かつ当該商標がすでに使用されている場合
(四)非常に深刻な自然災害、事故災害、公衆衛生事件、社会安全事件などの緊急事態発生時であって、当該緊急事態への対応に直接関連する場合
(五)良質な経済社会発展の支援、「知的財産権強国建設綱要」の実施推進のために必要性がある場合、または国家利益、社会公共利益あるいは重大地域発展戦略の維持において重大かつ現実的意義がある場合

第3条 早期審査を請求する商標登録出願は、同時に次に掲げる要件を満たさなければならない。

(一)出願人全員の同意があること

(二)電子申請方式を採用していること

(三)登録出願に係る商標が文字のみからなるものであること

(四)団体商標又は証明商標に係る登録出願ではないこと

(五)指定商品又は指定役務の項目が、第2条に掲げる状況と密接な関連性を有し、かつ、

「類似商品及び役務の区分表」に掲載された規範名称であること。

(六)優先権を主張していないこと

第3条 早期審査を請求する商標登録出願は、同時に次に掲げる要件を満たさなければならない。

(一)出願人全員の同意があること
(二)電子申請方式を採用していること

(三)商標が文字、図形、アルファベット、数字またはこれらの組合せで構成されていること

(四)指定商品または指定役務が第2条に掲げる状況と密接な関連性を有し、国家知識産権局が公表する受理可能な商品・役務名称であること

(五)優先権を主張していないこと

(六)団体商標または証明商標に係る登録出願ではないこと

第4条 商標登録出願の早期審査を請求する場合、次に掲げる資料を紙方式で国家知識産権局に提出しなければならない。

(一)商標登録出願に係る早期審査申請書

(二)本弁法第2条の規定に適合することを証明する関連資料

(三)中央・国家機関の関連部門、省レベルの人民政府又はその弁公庁(政府事務局に当たるー訳注)が発行した早期審査請求に関する推薦意見書、又は省レベル知的財産管理部門が発行した早期審査の請求理由と関連資料の真実性に関する審査意見書

第4条 商標登録出願の早期審査を請求する場合、次の資料を紙方式で国家知識産権局に提出しなければならない。

(一)商標登録出願に係る早期審査申請書

(二)本弁法第2条の規定に適合することを証明する資料

(三)中央・国家機関の関連部門、省レベルの人民政府又はその弁公庁が発行した早期審査請求に関する推薦意見書、または省レベル知的財産管理部門が発行した請求理由および関連資料の真実性に関する審査意見書

第5条 国家知識産権局は、早期審査請求を受理した後、当該請求が本弁法の規定に合致する場合には、法律に従って早期審査を許可し、審査決定を下す。 本弁法の規定に適合しないものについては、早期審査を行わず、法律に基づき、通常の手続に沿って審査を行うものとする。

第5条 国家知識産権局は早期審査請求を受理した後、提出資料を厳格に審査し、本弁法の規定に合致するものについては早期審査を許可する。不適合の場合には早期審査を行わず、5営業日以内に請求人に通知し、法律に基づき通常の手続で審査する。

第6条 国家知識産権局が早期審査を許可した場合、許可の日から 20 営業日以内に審査を完了しなければならない。

第6条 国家知識産権局が早期審査を許可した場合には、20営業日以内に審査を完了しなければならない。早期審査を行わない場合には、法律に基づき通常の手続で審査を行う。

第7条 早期審査の過程において、商標登録出願が次の各号のいずれかに該当すると判明した場合、早期審査手続を終了し、法で定める通常の手続に沿って、審査を行うことができる。

(一)法に基づき、商標登録出願に対して、補正、説明或いは訂正を行う必要がある場合、及び、同日出願の審査手続を行う必要がある場合

(二)商標登録出願人が早期審査請求を提出した後、審査の猶予を請求した場合

(三)その他の早期審査ができない事情が存在する場合

第7条 早期審査の過程で、次のいずれかの事由が認められた場合には、早期審査手続を終了し、通常の審査手続に移行することができる。

(一)商標登録出願について補正、説明または訂正が法的に必要である場合、あるいは同日出願に対する審査手続を行う必要がある場合

(二)出願人が早期審査請求後に審査の猶予を請求した場合

(三)その他早期審査を行うことができない事情が存在する場合

第8条 早期審査された商標登録出願について、法により審査結果が出された後、法律の関連規定に基づき、関連主体は初歩登録査定を経て公告された商標登録出願に対して異議申立を行い、又は、拒絶或いは部分拒絶された商標登録出願に対する拒絶査定不服審判を請求することができる。

第8条 早期審査された商標登録出願について、法により審査結果が出された後、法律の関連規定に基づき、関連主体は初歩登録査定を経て公告された商標登録出願に対して異議申立を行い、又は、拒絶或いは部分拒絶された商標登録出願に対する拒絶査定不服審判を請求することができる。

第9条 国家知識産権局は、商標登録出願の加速審査業務において、法に基づく職務の履行、公平な権力行使をしなければならず、規律監察部門の監督を受け入れ、その監督の下、早期審査業務が規範的かつ透明性をもって運営されるようにしなければならない。

第9条 国家知識産権局は、商標登録出願の加速審査業務において、法に基づく職務の履行、公平な権力行使をしなければならず、規律監察部門の監督を受け入れ、その監督の下、早期審査業務が規範的かつ透明性をもって運営されるようにしなければならない。

第10条 著しく悪影響を及ぼすおそれがある商標登録出願に係る迅速な処理の方法については、別途定めることとする。

第10条 本弁法に関しては、国家知的財産権局が解釈に係る責を負う。 国家知識産権局商標局は、商標登録出願の早期審査に係る具体的な業務を担当するものとする。

第11条 本弁法に関しては、国家知的財産権局が解釈に係る責を負う。 国家知識産権局商標局は、商標登録出願の早期審査に係る具体的な業務を担当するものとする。

第11条 本措置は、公布の日から施行する。 商標登録出願の早期審査に関するその他の規定が、本弁法と抵触する場合には、本弁法が優先するものとする。従前の「商標登録出願に関する早期審査弁法(試行)」(国家知識産権局公告第467号)は同時に廃止する。

第12条 本措置は、公布の日から施行する。 商標登録出願の早期審査に関するその他の規定が、本弁法と抵触する場合には、本弁法が優先するものとする。

 

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