そよ風 (No.387)

東方幸男

2018.05.01

あんぱん

ある研修で、特許の権利範囲について話しているときに、例えば「あんぱん」を例にするとどういうことなのか?という質問が出て、餡とパンの関係で発明の構成要素の説明をしたのです。

 

その後も、色々な例え話に、「あんぱん」だと、こうだよといった説明をして、イメージを掴めるようにしたのです。そしてこの際「あんぱん」を材料にして、発明の捉え方や発明のまとめ方の実例を、皆で検討しようかということとになり、少しばかり調査をしてみました。
「あんぱん」と言えば、銀座にある木村屋総本店の「あんぱん」が著名です。

 

日本では明治7年(1874年)に木村屋の創業者である木村安兵衛、英三郎の親子が、パンの普及のために
工夫を重ね、酒種発酵種を用いて小麦粉を発酵させた生地を使って小豆で作った餡を包み、和洋折衷の
「あんぱん」が作られたそうです。

 

通常パンはイースト菌などを使って発酵させますが、木村屋さんのパンは、お酒の発酵菌(酒種発酵菌)を
使います。イースト菌を使ったパンとは異なる香りがします。

 

調べた範囲では、そうした特許があるかどうか分かりませんでしたが、パン生地に使う原材料や,酒種はノウハウの塊で、種師と言われる人々が、技術の伝承とノウハウの維持に日夜努力しているとのことです。あの銀座木村屋総本店の「あんぱん」の味と品質は、こうして種師によって維持されてきているのです。知的財産の独占権でビジネスを継続して行くのとは異なり、微妙な「あんぱん」の味を伝承するために日夜努力を重ねることで技術の保護と保持を行っているのです。

 

初めて「あんぱん」を思い付いたときに、どのような権利をとることができるかを議論の材料にすべく、少し考えてみました。「餡」は元々詰め物を意味し、聖徳太子の時代には中国からに肉詰めのお菓子というか食品の形が伝えられていたようで、既に鎌倉時代には小豆を使った餡が登場していたのです。そこで小豆の餡をパンに詰めるという概念だけでは発明を構成し難いし、木村屋さんのようなパン生地に酒精という酒種を使うといった新しい要素が必要になります。

 

餡の中身を小豆だけでなく、ジャムやクリーム、さらにはカレーなど水分の多いペースト状のモノまで拡大して、餡子入りのパンを権利化するためにどのようなアイデアがあり、整理するとどうなるかを教材にできないかと思ったのです。

 

検討途中で見かけた発明に、加熱する包あん成型の食料品のアイデアで、ゲル状の物質で包み込み、過熱状態で生地に餡が吸収されて染み込むのを防ぐモノがありました。
特許第2598371号「包あん成形複合体食品の製造方法」で、こうした内容物の工夫も必要です。

 

パン用の酒種の特許は沢山あり、まだまだ開発が活発に行われています。
清酒酵母を使う特許第2534870号「パン用酒種の製造方法」や、黒麹を使う特許第3701959号
「酒種入りパン類」アイデアも提案されています。 

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