潮流 (No.91)

馬場錬成

2017.11.20

日本人の創造性について考える

 



期待に反した日本人の創造性

「日本人に創造性はあるか、それともないか。そのどちらかに回答してその理由を述べよ」


このような課題で小論文を書くように大学生に求めた。筆者が講義をしたのは東京理科大の学生諸君である。
学生に少しでも教養を身に着けてもらいという大学側の思いから教養講座を設けたもので、ひとコマを担当して
「21世紀のノーベル賞」のタイトルで講義した。

 

戦前から日本には、ノーベル賞受賞候補者になっていた科学者がいた。戦後から21世紀へと日本のノーベル賞
の変遷を講義しながら、日本人候補者と受賞者らの業績内容を解説した。その中で創造性ということは何も解説
しなかったが、講義の最後に出した小論文の課題が冒頭のタイトルである。

 

受講者137人の回答を見ると、日本人に創造性があると回答した学生が100人(73%)、ないとした学生が
36人(26%)、中間の回答が1人(1%)だった。インターネットには、日本人と独創性に関する情報が
かなり出ている。多くは、日本人の独創性を否定する報告が紹介されている。

 

このような情報を見ていると思われる小論文も多くあったが、それに流されずに自分の意見を述べているあたり
は評価したい。いずれにしてもこの結果は、筆者の予想を裏切った。
7対3もしくは8対2くらいで、日本人の創造性を否定する方に傾くと予想していた。

 

さらに創造性があると回答して論述している学生の中に、日本は特許出願件数が中国、アメリカについで
世界3位にあり、それは創造性がある証拠であるとした学生が数人いた。特許出願と日本人の創造性を
リンクさせた論拠に意表を衝かれた。

 

                                    

                                              学生が回答した日本人の創造性



日本のZ世代は自分には創造性がないという

2017年6月、アドビシステムズ社は、世界の5か国でZ世代(1995年から2008年のあいだに生まれた世代)を
対象に、クリエイティビティ(創造性)に関する意識調査の結果を発表した。
http://www.adobe.com/jp/news-room/news/201706/20170629-japan-gen-z.html

その結果を見ると、先進国の中でも日本の若者は、自分のことを創造的だとは思っていない人が圧倒的に多いことが分かった。
調査時点で日本のZ世代は12歳から18歳までとしているので大体が中学・高校生である。

 

  

アドビ社の報告は下記のサイトにある。↓
http://news.mynavi.jp/news/2012/04/26/027/


この調査では、日本の生徒は「創造性が求められる仕事や職業はたくさんある」と回答した人がきわめて低く、
グローバル平均が76%なのに日本は31%と報告している。

 

一方で、この調査の5年前の2012年4月に実施した世界5か国(日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、
フランス)の主要5か国の18歳以上、5千人を対象とした創造性に関する意識調査では、日本以外の国は
「最も創造性がある国」として日本をあげる回答が多かったという。
外国からは創造性のある国として高く評価されているにもかかわらず、日本人自身は創造性がないと考えている
ことが他の国と違う結果となっている。

 

日本には独自の文化があるとする意見

学生が「日本人には独創性がある」書いてきた小論文の主張点を読むと、日本には歴史的に醸成されてきた
様々な文化があり、それは創造性の源泉の結果であるとする意見が多かった。

 

さらに現代ではアニメ・漫画などの創作は、民族を超えた共感を呼ぶ作品であり、これは日本人の創造性の
成果であるとする意見も多くあった。
さらに産業用ロボット技術、高度技術の成果である特許出願なども日本人の創造性が高いから出ている成果と
している。

 

それでは、独創性がないとした意見はどうか。代表的な意見は、個性を埋没させ協調性を尊ぶ文化が独創性の
芽をつぶしているという主張だった。小学校時代の教育から協調性を重んじており、社会人になっても企業は、
協調性を最も重要視している文化が独創性をつぶしているとしている。

 

独創性がないとした回答の主張の多くが、日本人の独創性をつぶす社会の文化が、独創性の発揮の芽を摘んで
いるとしているものであり、日本人そのものが独創性がない民族としている主張はほとんどなかった。

 

一国の文化の指標にもなる言葉についても、中国から渡ってきた漢字文化を独創的なカタカナ、平仮名を
創り出して日本独自の言葉として成熟させたことをあげ、島国として独立した環境にあり植民地支配など
外部からの文化の移入から逃れ、独自の言葉と文化を醸成させていった特異な国であることに言及した
小論文も多かった。

 

筆者の見解

ここまで紹介して書いた以上、筆者の見解も書かざるを得ないだろう。
筆者は、以前から日本人は世界の民族の中でも類まれな独創性のある民族だと思ってきた。
確かに世界を変えるような独創的な技術や文化は少ない。
 
しかし歴史的に見ても、世界の近代文化の中心地にあったヨーロッパから遠く離れた国であったが、種子島への
鉄砲伝来からほどなくして鉄砲を戦術の武器として改良したり、織田信長が木造船に鉄板を張り巡らせて、
世界で初の軍艦を実現するなど創意工夫には長けていた。

 

明治維新以来、西欧の戦艦や武器を移入し、それを模倣する武器製造を行って世界の中でも軍事大国となり、
ついには対米英戦争を起こしてぼろ負けしたが、そのような選択肢を捨てて、もっと高い文化を目指した
国つくりをしていれば、もっと違った国になっていたかもしれない。
そのような感慨を抱かせるような文化国家ではないかと考えている。 

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